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[画像: 潮田友子《方舟はのぼる/23》2023年、58×34×19cm、木材]

潮田友子 「In her hands - 方舟はのぼる - 」

L'arte ラルテ(produce by GALLERY KTO)
終了しました

アーティスト

潮田友子
外苑前の美容室ラルテにて、潮田友子の個展「In her hands -方舟はのぼる-」が開催されている。本展は絵画・彫像・オブジェによるインスタレーションとして構成された、意欲的な展覧会だ。潮田は1980年代より、ドイツや日本の美術館/ギャラリーにて、継続的に作品を発表し続けるアーティストである。潮田の作品は、一見するだけで目を奪われるものの、より仔細に観察することで、その「見かけ」の印象に新たな真の構造が上書きされるはずだ。

本展の会場である美容室の入り口脇には、《方舟はのぼる/23》が配置されている。この彫像は、タイトルにある「方舟」を表現している。舟の床面の白い絵具は海水のようだ。また一見すると、舟の中には、木で形成された小さな立体物が入り乱れているようにも思われる。かすかに浸水した何らかの容れ物に、多数のカラフルな角材が収められているのだ。

しかし、ここで各パーツを注意深く検討すると、それらはサイズこそ違えど類似した形態を示していることがわかる。とりわけ、三角柱や四角柱に、三角や台形の面が直交するものが多用されている。それでも、赤・青・黄・緑など鮮やかな色がたくさん用いられているためか、この方舟は、単調で単一的な「容器」という印象を与えない。美容室には欠かせない鏡にもにて、互いの形態を相似的に映し合う各部分が、新作彫像《方舟はのぼる/23》に豊かな複雑さをもたらしていると言えるだろう。

以上から、初めバラバラなように思えた角材の間に形態的類似が見いだされ、それらは鑑賞者の目を楽しませるカラフルな色彩の利用を伴っていることが理解されたはずだ。

色彩の多様さによって、類似した複数の形態の差異を際立たせる戦略は、美容室奥の壁面で展開される、六角形の絵画(「pentagon」シリーズ)から成るインスタレーションにも指摘できる。六角形は、それぞれ等しい大きさであっても、その中の長方形を、赤・橙・緑・黄など異なる色で塗ることで、さまざなヴォリュームを感じさせる。膨張したり、冷たく縮こまったりしているような六角形が確認される。鑑賞者の実感におけるスケールと実際の作品サイズとのギャップが、ここで露呈するのだ。

観察によってはじめの印象が覆されるという事態は別の壁面に掛けられた絵画にも指摘できよう。鋭角の三角形が特徴的なそれら「triangle」シリーズはきまって、赤・青・白・黄・灰色の幾何学的色面のパッチワークによって形成されている。多くの場合、黒いラインが挟まれたとしても、各色面は同じ綿布上に並置されている。しかし、《triangle f.P.M./4》は、極端な鋭角をもつ直角三角形を2つ組み合わせることで1つの作品になっている。両者の間に空いた数ミリの「ライン」によって、先ほどの色面が区分けされているのだ。つまり、色面によって線が事後的に発生している。そして、色と線という組み合わせは、入れ子式に各色面内部でも提示されている。

絵画の基礎とでも言うべき件のペアを、インスタレーションという新たな形式で問う、潮田の新作展を是非ご覧いただきたい。

スケジュール

2023年6月29日(木)〜2023年9月4日(月)

開館情報

時間
10:0020:00
土曜日・日曜日・祝日は19:00まで
休館日
火曜日
入場料無料
会場L'arte ラルテ(produce by GALLERY KTO)
https://www.kto-gallery.com/locations/l'arte
住所〒107-0061 東京都港区北青山2-12-8
アクセス東京メトロ銀座線外苑前駅3番出口より徒歩3分
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