保井智貴 「誰彼のふちとパラレルワールド」

LOKO GALLERY
残り5日

アーティスト

保井智貴
LOKO GALLERYでは初となる保井智貴の個展「誰彼のふちとパラレルワールド」を11月21日より開催いたします。
保井は一貫して「人から立ち上がる空気感とは何か」を主題に据え、その不可視の気配を捉え続けています。これまで、古典的で極めて扱いの難しい乾漆という素材を用い、人物像に空気の厚みを纏わせるような着衣像を制作してきました。ある作品を契機に乾漆による制作プロセスを中断し、自らの手業を解体、拡張するかのように、新たな方法論へと踏み出しています。

その新たな実践では、人物の形態を丸ごと3Dスキャナーによってデータ化し、3Dプリンターによって像を出現させるというプロセスが採用されています。作家の身体性を介さないデジタルの手業は、モデルと作家との距離を意図的に引き離すかのように作用しています。同時にそれは、水平線と直立像をめぐる座標軸の原点を探りつつ、より深い位相を見据える意志が見て取れます。

しかし、デジタル的プロセスによって「人物の空気感」を本当に捉えることができるのでしょうか。むしろ、その過程で生じる予期しない内外(うちそと)からのノイズは形態を緩ませ、輪郭を溶かすなど、表象の純度を揺さぶります。ただし保井は、まさにその揺さぶられた純度の中にこそ惹かれるものがあり、永遠に捉えきれない感覚にこそリアリティーがあり、かつ捉え切りたいという欲があると語ります。

AIの領域において「ノイズ」とはしばしば除去されるべきものとされ、個々の人間的な揺らぎすら不要な変数として排除されがちです。対して保井の実践は、不可視の空気感を求める営みとして、ノイズをただ消去するのではなく、その中に潜む別様の世界――すなわちパラレルワールドを探り当てようとするものです。

また、近年では、その探求を人物像からさらに拡張し、空間や環境そのものを“像”として捉える試みを続けています。
映像作品では、家や街の空気を彫刻的に扱い、また《彼の青(ラピスラズリ)》や《彫刻のための服と靴》の作品群では、身体の不在を媒介にして気配を捉えることを試みています。
これらの実践はすべて、「人」と「世界」のあわいに生じる空気のグラデーションを見つめる、連続した探求といえるでしょう。

[関連イベント]
1. トークイベント
「設営と撤収のエクリチュール」
近藤恵介、冨井大裕、保井智貴
日時: 11月16日(日)15:00〜17:00
2. トークイベント
「グラデーションの世界」
保井智貴 × 清家弘幸 × 阿久津裕彦
日時: 12月6日(土)15:00〜 / レセプション 17:00〜

スケジュール

開催中

2025年11月21日(金)〜2025年12月20日(土)あと5日

開館情報

時間
11:0018:00
休館日
日曜日、月曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://lokogallery.com/archives/exhibitions/parallelworld
会場LOKO GALLERY
http://lokogallery.com/
住所〒150-0032 東京都渋谷区鶯谷町12-6
アクセス東急東横線代官山駅北口より徒歩7分、JR渋谷駅南口より徒歩10分
電話番号03-6455-1376
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