STANDING PINE 東京STANDING PINEでは、2026年4月11日(土)より、日本の戦後美術を代表する画家のひとり、今井俊満(1928–2002)の個展を開催いたします。
1928年京都に生まれた今井俊満は、東京藝術大学美術学部油画科で1年間学んだのち、1952年に渡仏しました。滞在先のパリでは、サム・フランシスや美術評論家ミシェル・タピエらと交流を深め、当時パリを中心に広がりを見せていたアンフォルメルの潮流のなかで、重厚なマチエールと躍動する色彩を特徴とするダイナミックな抽象表現を確立します。さらに、1956年に開催された朝日新聞社主催「世界・今日の美術展」(日本橋高島屋など)では、岡本太郎からの要請を受け、タピエ所蔵作品の出品に関する斡旋に携わり、日本にアンフォルメルを紹介する重要な役割を果たしました。
こうした活動を背景に、1950年代の画面を特徴づけていた厚みのある絵肌と激しい筆勢は、1970年代に入ると、より大きく簡潔なストロークへと転じ、新たな構成性が立ち上がります。その変化のなかで、絵具の物質感における「過剰」から「純化」へと向かう動きは、「Black」や「Untitled」にも見られる、中心を失った構成を引き裂くような筆跡として、いっそう鮮明に姿を現していきました。ヨーロッパで「東洋のカリグラフィー」とも評されたこの記号のような筆の運びは、今井にとってアンフォルメルの臨界点を示すと同時に、のちの「花鳥風月」シリーズへとつながる転換を形づくっていったのです。
一方、1970年代は、アンフォルメルの経験を踏まえながら、自身の制作活動をより広い文化的視野のなかで捉え直していく時期でもありました。1970年の大阪万国博覧会では企業パビリオンの美術監督を務め、壁画制作やファッションそして音楽との協働など多方面にわたる実践を展開します。今井が「私にとって重要なのは、絵画でなく文化である。」と記したように、彼の作品とその姿勢は単なる様式の変化にとどまらず、西洋と日本、抽象と文化のあいだを往還しながら、表現の領域を押し広げていく試みであったといえるでしょう。
本展を通して、アンフォルメルを経てなお更新されつづけた今井俊満の独自性と、その挑戦のなかから生み出された作品群を、あらためてご体感いただければ幸いです。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。
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