湯木美術館本展は「土地」に注目して、日本国内にある場所に焦点を当てた茶道具を取り上げる試みです。
茶の湯の道具には、固有の名前である「銘」を持つものがあります。茶室という限られた空間に彩りを付してくれる銘ですが、実在の地名に由来する銘を持つ茶道具も少なくありません。
「志野茶碗 銘 広沢」(重要文化財)は16~17世紀に美濃で焼かれた茶碗です。長石釉が分厚く掛けられた半筒形をしており、胴側面に輪違い文様や縦棒や三日月が鉄釉で描かれています。京都嵯峨野にある古くから月見の名所として知られた広沢池を連想しての銘とみられています。
和歌にしばしば詠みこまれるような、詩的なイメージを持つ歌枕の銘のある茶道具もあります。奈良県中部を流れる飛鳥川は、流れの変化が激しいことから、定めなき世のたとえとされました。「瀬戸肩衝茶入 銘 飛鳥川」は、小堀遠州がかつて見たときは心が動かなかった茶入が、後年再び目にしたときにすっかり古色を帯びていたところから銘が付けられました。
茶道具には土地のイメージが描かれる場合もあります。「色絵武蔵野文茶碗 仁清窯」(後期展示)は、胴に青と緑で描かれた薄が上絵付けされています。関東平野西部の原野である武蔵野は、果てしなく広がる薄野原として認識されてきました。
「茶にかなう」ことを共通点として、窯ごとの特徴を持った国焼の視点も欠かせません。中世からやきものを生産してきた備前・丹波や、茶の湯の隆盛に伴うように興った美濃・萩・唐津・高取など。茶席にみられるやきものには、各地の個性が発揮されています。
このように、銘・デザイン・産地をトピックとし、前・後期あわせて約40点を陳列いたします。
前期: 9月1日(日)~10月20日(日)
後期: 10月23日(水)~12月8日(日)
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