「都市倫理のアフター・パノプティコン」

POOL SIDE GALLERY
4月12日終了

アーティスト

小寺創太、小山渉、町田太一
POOL SIDE GALLERYは、金沢21世紀美術館の外縁に位置する、2024年設立のコマーシャル・ギャラリーである。名称は、レアンドロ・エルリッヒの〈スイミング・プール〉をプールサイドから眺めるという、わずかな距離の意識に由来する。本ギャラリーは、美術館という制度的中心に正面から対峙するのではなく、その外側に立ちながら、視線の構造そのものを静かに反転させる場として構想された。

ここは、中心を観察しうる私的空間という意味で「民営のパノプティコン」と呼べるかもしれない。しかしその目的は統制ではない。制度が前提としてきた〈見る/見られる〉という関係の条件を、あらためて表に出すことである。鑑賞と監視、参与と距離、内と外。そのあいだに生じるわずかな緊張を引き受けながら、POOL SIDE GALLERYは境界面に立ち続ける。中心に近づくことは、対立の身振りではなく、可視性を媒介としたひとつの介入である。

本展「都市倫理のアフター・パノプティコン」は、監視社会という現実を前提としながら、そこにおける倫理の条件を問い直す試みである。鑑賞は一方向の行為ではない。作品を見つめる身体もまた、他者や環境の視線にひらかれている。双眼鏡やベンチといった装置は、その往還をあえて可視化するために設置される。普段は背景に退いている監視の構造を、ひとつの風景として立ち上げるためである。

ここで言う「アフター・パノプティコン」とは、近代的な監視モデルの単純な“その後”を意味しない。パノプティコンが前提としていたのは、中心に集約された視線と、不可視の監視主体であった。「見られているかもしれない」という不確実さが、主体に自己規律を内面化させる。その構図は長く社会を形づくってきた。

しかし今日、都市空間ではCCTVやスマートデバイス、SNSが常態化している。私たちは、見られていることを知りながら見る。観察することそのものが、どこかで観察されている。主体は監視者でも被監視者でもなく、「観察が公開される存在」へと変わりつつある。視線はもはや一方向の装置ではなく、循環するインフラのように都市を横断している。

この点において本展は、権力の流動化を論じたジグムント・バウマンの議論とは距離をとる。重要なのは、監視が拡散したという診断そのものではない。問題は、視線がどのような条件のもとで公開され、いかなる相互性を持ちうるかという問いである。アフター・パノプティコンとは、監視主体の不可視性を解体し、観察行為そのものを展示の対象へと引き寄せる試みである。不可視の権力を告発するのではなく、視線の構造をそのまま空間に差し出す。そこから、都市における倫理的な距離の取り方を再編する。

鑑賞の重なりは、見る/見られるという関係を揺らし、新たな公共性の輪郭を浮かび上がらせるだろう。本展は、制度の外縁から都市の言説空間へと静かに接続し、周縁にある視点を中心的な議論へと差し向ける。そのための、小さな回路をここにひらきたい。

スケジュール

開催中

2026年3月19日(木)〜2026年4月12日(日)あと14日

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
月曜日、火曜日、水曜日
入場料無料
会場POOL SIDE GALLERY
https://poolsidegallery.jp/
住所〒920-0962 石川県金沢市広坂1-2-32 北山堂ビル2F
アクセスJR金沢駅東口よりバス「広坂・21世紀美術館」下車徒歩2分、JR金沢駅東口よりバス「香林坊(アトリオ前)」下車徒歩8分
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