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大島渉 「多摩多摩」

IG Photo Gallery
終了しました

アーティスト

大島渉(大島智子、山本渉)
IG Photo Galleryでは2022年12月6日(火)より大島渉展「多摩多摩」を開催いたします。
大島渉は、イラストレーター・映像作家・漫画家の大島智子と、写真家・美術家の山本渉のアーティスト・ユニットです。今回展示する作品は、山本が撮影した写真をもとにした大島の水彩画、山本の写真(1点もののインスタント写真)への大島のドローイングと山本の写真(同前)を組み合わせた作品です。

IG Photo Galleryでは過去に山本渉の展覧会を行っています。前回の個展「エイリアンズ」(2018)は、ハンドメイドのピンホールカメラを植物が群生する土中に埋めて撮影した作品でした。太陽に視線を向けたその作品は、あたかも植物のまなざしを視覚化したかのようであり、人間中心の視点で「植物を見る」から「植物から見られる」関係へとポジションをずらす試みでした。
今回の作品で、山本は自身の居住区域にカメラを向けています。もともとは大島が絵を描くための資料として撮影をはじめたという経緯から、それらの写真は、山本の視線であると同時に、大島の視線を想像しながら世界を見たものだとも言えるでしょう。その結果、カメラを持った人物個人のこだわりや嗜好がいったん写真の後ろに下がり、私たちの環境と空間との関係をニュートラルに浮かび上がらせています。

一方、大島はGIFアニメーションの制作で注目され、現在はCDジャケットなどのイラストレーションや、MV制作などの映像作品、漫画作品を発表しています。若い女性や男性を描くことが多く、キャラクターの感情の揺れ動きを繊細に表現した作風が主に若い女性たちの共感を得ています。
山本が屋外でフィールドワークを行うのに対し、大島はアトリエでイメージをもとにイマジネーションを広げるという方法を採っています。それはまるでイメージに囲まれて育った現代人の視覚環境を前提に、その外側にある「もう一つの世界」にアプローチしようとしているかのようです。写真をもとにした水彩画、写真の上に描かれたドローイングは現実とファンタジーの境界を越え、現実世界のそこここに描かれた人々の思念が漂っているようにすら感じます。
そもそも写真と絵画の関係は深く、1839年に写真が発明された時には画家たちに大きな衝撃を与えました。歴史画家のポール・ドラローシュが言った「今日を限りに絵画は死んだ」という言葉がよく知られているように、画家にとって写真の発明は、鍛錬を重ねて身につけた技術の否定であり、それまで西洋絵画がつくりあげてきた美学をおびやかすものだと考えられたのです。
しかし、それから約180年の時を経て、現代の私たちが目にしているのは、絵画は死ぬどころかますます多様化し、写真は写実に留まらず、アートの一ジャンルとして発展を遂げた現実です。こうして写真と絵画の境界を行き来する作品が登場することも必然的だと言えるでしょう。

また、「多摩多摩」のモティーフになっているのが東京郊外の多摩地区であることも意味深長です。かつて田園地帯だったこの場所は、高度経済成長で急拡大した首都東京を支えるベッドタウンでもあり、宅地造成によって新たなライフスタイルを生み出してきた場所でもあります。住宅が密集しつつも緑豊かな環境は、現代の日本で生まれ育った人々の原風景とも言えるでしょう。また、郊外の住宅地はしばしば日本の漫画やアニメの舞台になり、子供たちは「よく似ているけれどここではないどこか」としてフィクションの住宅地を見てきました。
大島も山本もかつてはそうした子供でした。「日常」の場所としての住宅地と、そこで起きるかも知れない「非日常」のできごと。大島渉の作品は、この国に生まれ育った私たちが知らず知らずのうちに想起してしまう「物語」のワンシーンを視覚化したものなのです。

スケジュール

2022年12月6日(火)〜2022年12月24日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
最終日は18:00まで
休館日
日曜日、月曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://www.igpg.jp/exhibition/oshimawataru.html
会場IG Photo Gallery
https://www.igpg.jp/
住所〒104-0036 東京都中央区銀座3-13-17 辰中ビル302 石田法律事務所内
アクセス東京メトロ日比谷線・都営浅草線東銀座駅A7出口より徒歩3分
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