《DEFIANT GUYS》は、若い頃から聞き続けてきたパンクロックグループTHE STAR CLUBの著名な楽曲に触発された作品で、画面にはそのタイトルや歌詞の一部が描き込まれています。お気に入りの音楽をモチーフとしたドローイングは、これまでもよく見られたものですが、ここではそれがポスターに近い大判の紙に黒一色の太い線で描き出されています。奈良はここで、紙のテクスチャーになじみ、濃淡や抑揚といった線の表情を出すために、程よい柔らかさを持った工業用の特殊なマーカーを使っています。大きなカーブを描く顔や頭、たなびく前髪、釣り上がった目元、振り上げた拳、それぞれをかたどる線が迷いなく一息に引かれています。「反抗するやつら」の炸裂するエネルギーをそのまま乗せたような、これらの線のスピードとリズムそしてその大画面の迫力が観る者を圧倒します。
《POWER IN A UNION》では、廃材に施された薄いレモンイエローの地の上に、茶色い太い輪郭線で目を大きく見開きポカンと口を開けた人物の上半身を描いています。この人物が見つめる画面下方にはワインレッドで「POWER IN A UNION」というタイトルの文字が記されています。この言葉は労働者間の連帯を呼びかけるビリー・ブラッグの歌『There Is Power in a Union』(1986年)に由来します。この引用は、奈良が若い頃から触れていた1950〜60年代のカウンターカルチャー、ロックやフォーク音楽に根ざした社会的関心や政治的意識を反映しています。奈良はここで子どものように頼りない胴体を持つ人物を、そのちんまりとした印象には不釣り合いな過剰な大きさで描き出しています。小さな下絵あるいは原型を拡大し、スケールの大きな作品として仕上げる時、そこに奈良はいつも弱小に見える者が有する強大な力という価値の逆転の意味を込めてきました。ここでもこの人物のサイズ自体に、彼/彼女のように弱小なる者同士が連帯した時に発せられる力の強大さを語らせています。「持てる者」と「持たざる者」の格差が広がる現代社会に、奈良はこの作品を通じてアクチュアルなメッセージを投げかけています。
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