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ジャン・ユンヤオ 「甜心」

ARTRO(アルトロ)
終了しました

アーティスト

ジャン・ユンヤオ
ARTROおよびDon Galleryの共同企画により、中国人アーティスト・張雲垚(Zhang Yunyao)による日本初の個展「Sweetheart(甜心)」を開催いたします。京都において歴史的・文化的背景をもつ2つの会場──ARTROと妙心寺桂春院──を舞台に展開され、オープニングレセプションは11月14日に行われます。

本展は、二つの空間を軸に構成され、世俗と精神、物質とイメージのあいだに横たわる対話を試みます。張雲垚は長年にわたり、フェルトを主な素材として制作を行っており、その柔らかくも強靭な質感や繊細な手触りを通じて、感情や時間の流れを表現してきました。鉛筆や木炭を用い、手作業による繰り返しの擦り、描写、重ね塗りを経て、時間の堆積の中でイメージは時に鮮明に、時に曖昧に浮かび上がります。
京都市中心部に位置するARTROは、明治期に建てられた百年の歴史を持つ土蔵を改修した建物です。伝統的な構造の肌理を残しつつ、現代アートギャラリーとして再生され、入口にはカフェを併設し、「アートが生活に溶け込む」空間体験を提供しています。張雲垚がARTRO会場で展示する作品群は、この“生活の中の芸術”という空間性に呼応するものです。フェルトをキャンバスに、菓子や器物を主題とした静物画シリーズを展開し、透徹した造形と温かみのある色調によって感覚的な喜びを喚起しつつ、欲望や優しさ、そして脆さをめぐる哲学的な暗喩を内包しています。「Sweetheart(甜心)」というタイトルは、単なる甘美な外観を超え、人と物との親密な関係──現代において消費と再構築を繰り返す“柔らかなまなざし”──を象徴しています。
妙心寺桂春院は16世紀に建立され、京都でも有数の規模と歴史を誇る禅宗寺院のひとつであり、京都府の指定有形文化財に登録されています。静謐な庭園と深遠な空間構成をもつ桂春院は、日本文化における「間(Ma)」や「無常(Mujō)」の美学を象徴してきました。この精神的な場において、張雲垚は《時間(Time)》シリーズの最新作──小品20点のフェルト絵画──を発表します。本シリーズは2021年より継続的に展開されており、アーティストは瞑想的な繰り返しの描写によって、各時代・地域の彫像の顔の細部を溶解するような視覚言語へと変換しています。今回の京都での新作は、日本の能面や伎楽面を主題とし、それらを「人格と虚無」「形象と精神」の緊張関係を象徴する存在として再解釈しています。
能楽の伝統において、面の“静”は無表情を意味せず、むしろ無限の感情を内包した静止を意味します。張雲垚は、これを自身の一貫した「脱具象化」の手法で再構築し、儀式的な道具を時間と存在をめぐる瞑想的イメージへと転化させています。ぼやけた線や褪せた階調は、記憶が意識の奥底で反響を繰り返すようであり、禅における「空」の概念を想起させながら、知覚・身体・時間の関係性に対するアーティストの継続的な探求を示しています。
「Sweetheart(甜心)」は、張雲垚にとって日本初の個展であると同時に、彼の創作の延長線上にある「柔らかな思考」の実践でもあります。ARTROのミニマルなカフェ空間から桂春院の禅庭園へ──展覧会は、世俗と精神、物質と観念のあいだを往還する連続体として構成されています。異なる空間的文脈のなかで、アーティストの作品は「時間の質感」をやわらかく探り出す。それは、甘美な一瞬の停止であると同時に、静かに消えゆく時間そのものでもあるのです。

スケジュール

2025年11月12日(水)〜2025年12月14日(日)

開館情報

時間
11:0018:00
休館日
月曜日、火曜日

オープニングパーティー 2025年11月14日(金) 17:00 から 20:00 まで

入場料無料
会場ARTRO(アルトロ)
https://artro.jp/
住所〒604-8126 京都府京都市中京区貝屋町556
アクセス阪急線烏丸駅16番出口より徒歩5分、地下鉄烏丸線四条駅1番出口より徒歩7分、地下鉄烏丸線烏丸御池駅5番出口より徒歩7分
電話番号075-585-4554
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