佐久市立近代美術館 油井一二記念館1994年に長野県東部町(現東御市)に移住した美術家島州一(しまくにいち・1935-2018)は、長野県境に連なる山々の南斜面の集落の中に居を構え、日々生活を重ねていた。そこから南に広がる大パノラマを眺めると、左後方に噴煙を上げる浅間山があった。
――私とこの土地を密着させるためのアイコン探しに10年は軽く過ぎたが、探求を続けるうちに浅間山がクローズアップされ私の意識を独占した
そう書いている島は、2006年に浅間山をモチーフにした「ASAMAシリーズ」の制作、そして翌年の2007年より自らが日常着用しているシャツをトレースした作品《Tracing-Shirt》の制作を開始した。
トレースは対象をなぞって写し取る技法だが、情報過多の時代に対応する手段として1987年から島が行っていた表現手法のひとつでもある。島は次のように書いている。「有り余る情報を任意にすくい取ってつくり直し、様々な異なる次元の情報を自分の網目でふるい直してパロディ化してみることも出来る。それは第二の自然である。すなわち情報の確認のために対象をつくり直して表現するパロディ用法である」
この地での定住とこの地の象徴としてとらえた浅間山をモチーフとすることを、同意義的に行おうとしたとき、島のシャツが、トレースという情報確認の表現手法によって浅間山に見立てられ、《Tracing-Shirt》が制作された。2017年まで続いたこのライフワークで、236点制作された島州一の代表作を大々的に紹介する。
【同時開催】浅間ときどき富士―ゆかりの品と山辺の風景
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