女子美術大学 女子美アートミュージアムかつて法隆寺の金堂を華麗に彩っていた壁画は、インド・アジャンター石窟や中国・敦煌石窟などの壁画とともに、アジアの古代仏教絵画の至宝として衆目の認める存在でした。周知のごとく、昭和24年(1949)1月26日の金堂火災によって外陣壁画12面は焼損し、私たちの前から姿を消してしまいました。しかし幸いに、先人たちが苦労して作り上げた壁画の模写と複製写真によって在りし日の姿を偲ぶことができます。
明治時代から幾人かの画家たちによって部分的な模写が行われていましたが、本格的なものとして、昭和15年(1940)文部省主導のもと着手された「昭和の模写」(昭和24年金堂炎上のため未完成)と、焼損後の昭和43年(1968)朝日新聞社の企画で完成した「再現模写」の二つの模写事業があります。ともに当時の日本画壇の精鋭たちが威信をかけて取り組んだ、日本美術史上の一大プロジェクトでした。そしてそれらの模写にあたって下図や手本として利用されたのが、昭和10年(1935)文部省の依頼で京都の便利堂が撮影した原寸大分割写真のコロタイプ版や原色版分解写真でした。また同12年に作成されたコロタイプ版原寸大複製は、モノトーンながらオリジナルの持つ優れた描写力を存分に味あわせてくれます。
本展覧会では、法隆寺金堂壁画に接した往時の臨場感を来館者に体感していただけるよう、高さ3メートル強に及ぶコロタイプ版原寸大複製12幅を一堂に展示します。併せて明治時代の安田靫彦、「昭和の模写」および「再現模写」に従事した橋本明治、吉岡堅二らの模写作品を紹介し、金堂壁画本来の魅力はもとより、文化財保存に対する人々の情熱、美術における模写の意義等について触れ得る機会となれば幸いです。
[画像: 法隆寺金堂壁画コロタイプ版複製 第六号壁「阿弥陀浄土図」310.5×257.5cm, 女子美術大学美術館蔵]
【関連イベント(いずれも参加無料・申込不要)】
①女子美 コロタイプ・フォーラム
日時:5月7日(土)13:00~16:20
会場:相模原キャンパス10号館1階1011教室
内容:
・講演「法隆寺金堂壁画の魅力」:女子美術大学名誉教授 永井信一(美術史家)
・講演「壁画模写制作の回想」: 女子美術大学名誉教授 松本俊喬(日本画家)
・ワークショップ「コロタイプ印刷を体験しよう」:便利堂コロタイプ工房 山本修
②ギャラリートーク:稲木吉一(女子美術大学教授)
日時:4月30日(土)・5月14日(土)13:30~14:00
会場:女子美アートミュージアム
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