《Itʼs OK. Itʼs OK. Itʼs OK.》と名付けられた三連画は、小さなスニーカーと花瓶に添えられた花を組み合わせた作品です。その履き古された子ども靴は、かつて自分の子どもに暴力を振るい、家族と疎遠になったまま孤独死を遂げた男が、その子に買い与えたものだといいます。タイトルに用いられる「Itʼs OK(大丈夫だよ)」というフレーズは、一見優しげに聞こえますが、矢継ぎ早に3回繰り返すことで、いまなお後を絶たない児童虐待の問題への怒りを表しています。花の向こうに見えるのは、無限の愛を示すマリア像とロザリオの先に揺れる小さな十字架です。世界のどこかで今、痛みや苦しみを抱えている子どもたちが守られますようにと、静かな祈りの声が聞こえてくるかのようです。
《Say yes to me》は、熊谷の「プリミティブなものが持つ、美しさと恐ろしさ」に対する畏怖の念から生まれた作品です。熊谷の象徴的な作品のスタイルを継承し、シングルベッドサイズのキャンバスに描かれたのは、銃で撃たれ、川に晒された子鹿の姿。古より、世界中の様々な祈りの場において信仰の対象としてあった「川」と「鹿」というモチーフは、同時に畏れの対象でもあり、矛盾を孕む存在です。熊谷はこれを、学生時代から制作し続けている〈Leisure Class(有閑階級)〉シリーズの作品と組み合わせました。「Leisure Class」とは、社会的威厳を示すために高価なものを消費する人々を指す言葉で、熊谷の生い立ちと深く結びついています。男が身につける派手なシルクシャツの柄をよく見れば、銃口の先がもう一方の画面の子鹿に向けられており、未だ現代社会に蔓延る人種問題を示唆するもののようにも見えてきます。このほか4点の油絵の大作や小品など新作絵画全6点と、ドローイング10点を展示予定です。
まだコメントはありません