2000年代には<カブキノクニ>においてカラーのスナップを発表し、改題を経て2003年に『フニクリフニクラ』としてまとめられます。どこで撮られたのかわからない光景の連続の中に、どこかノスタルジーを覚える不思議な作品ですが、これとほぼ同時期にはじまる<half awake and half asleep in the water>や、それに続く<Ever After>では、自ら水中に身を置くことで視線の位置が少なからず示され、見る者は作者の身体感覚を共有するように風景へと導かれていきました。水に関係するこれらの作品を通じて、楢橋朝子はますます広く知られるようになります。
最新作の<Fragments>は、昨年発表された<1961 There Were Standing There>に続き、父・楢橋國武が遺した写真をめぐる作品です。前作では60年代にソ連や中国で撮影されたネガを楢橋自身が選定しリプリントしましたが、本作ではアルバムやネガそのものが被写体として提示され、新たな距離の中に現れます。この変化は、これまでの楢橋の作品を知る多くの人にとっても印象的なものとなるでしょう。
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