この度、ギャラリー小柳では2023年9月5日(火)から10月27日(金)の会期にて杉本博司の個展「杉本博司 火遊び Playing with Fire」を開催いたします。本展は、杉本が暗室の中で現像液や定着液に浸した筆を駆使して印画紙に書を揮った最新シリーズ「Brush Impression」から《火》を中心とした新作を初公開いたします。
今回の展覧会では《火》を中心に展観いたします。杉本によるところの「誕生の秘蹟でもあり、燃え尽くす終焉の響きでもある」火と幼少期からさまざまな関わりを持ち、「In Praise of Shadows 陰翳礼賛」シリーズでは、蝋燭に灯した火が辿った時間の軌跡を一枚の写真に収めました。本作では、薄暗い暗室の中で「時に手を出し足を出して、燃え盛る」様子を映し出すように筆を使い分け筆跡に多様な質感を与えながら、まるで火遊びをするかのように《火》を無数に書き続けました。一定時間印画紙を光に晒すことで文字に淡い桃色や赤色を写し、さながら大火事にでも見舞われたかのような色とりどりの《火》が展示空間を覆います。その傍には「炎」や「灰」が密かに紛れ込み、時に燃え上がり時に灰となって静まるさまざまな《火》の姿を物語っています。