「キュレトリアル・スタディズ17: 日常の二重性―テキスタイルの表現からみる―」

京都国立近代美術館
3月8日終了

アーティスト

田中千世子、ひろいのぶこ、村山順子、アリ・バユアジ、メイ・エンゲルギール、レオッネ・ヘンドリクセン
1963年に開館した京都国立近代美術館では、早い段階からテキスタイルによる作品をとり上げてきました。継続的に取り組むのは、これまで紹介してきた作品が内包する表現の可能性と批評性を、今日的な状況を踏まえた上で再検証するためでもあります。
「テキスタイルの冒険―現代オランダの4人のアーティスト」(1996)において、レオッネ・ヘンドリクセンを紹介してから、30年が経ちます。今回展示する彼女の近作は、コロナ禍で顕在化した不安定な日常を送る人々にとって、必要な連帯を模索した作品です。サークルを描くように配置された半透明の袋状のモジュールは、人々の身体が互いに支え合うことで成り立つコミュニティを表わしています。
本展では、ヘンドリクセンの作品が提起する身体性をキーワードに、具象的な造形やモティーフを用いるのではなく、素材や構造と、織ったり縫ったりする行為そのものが象徴的な意味を持つテキスタイルの方法論について考えます。
布の身体性には、衣服として使用されることから想起される身体と、制作の主体である身体というふたつのアプローチが指摘できます。きものは、一般的に模様が鑑賞対象とされますが、村山順子の作品は、その着用性によって毛皮を纏うイメージを喚起させます。かつてきものだった大麻布を用いたメイ・エンゲルギールの作品や、田中千世子の〈袈裟〉シリーズは、切断し再構成することで新たな文脈をつくります。一方、ひろいのぶこは、織物の工程で通常は隠される糸の結び目を、切って結んだ行為の痕跡として見せ、費やされた時間や労働の価値、もしくは結び直すという象徴的な関係性を示しています。こうした関係性の射程を共同体へと広げ、アリ・バユアジは紡ぎ、染め、織り直すプロセスによって、コミュニティの再編を問うてゆきます。
作品の前で私たちが目にするのは、ただ結び目であり、継ぎ接ぎであり、布の重なりにすぎないのかもしれません。しかし日常的に見慣れた眺めの奥にこそ、私たちを取り巻く社会への想像を広げるためのしぐさが隠されているのではないでしょうか。

会場: 4F コレクション・ギャラリー内

スケジュール

開催中

2025年12月11日(木)〜2026年3月8日(日)あと84日

開館情報

時間
10:0018:00
金曜日は20:00まで(12月12日、19日を除く)
休館日
月曜日
12月30日~1月3日・1月13日・2月24日は休館
1月12日・2月23日は開館
入場料一般 430円、大学生 130円、高校生・18歳未満・65歳以上 無料、12月13日は無料
展覧会URLhttps://www.momak.go.jp/Japanese/curatorialstudiesarchive/17.html
会場京都国立近代美術館
http://www.momak.go.jp/
住所〒606-8344 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
アクセス地下鉄東西線東山駅1番出口より徒歩5分、京阪線三条駅9番出口より徒歩15分、阪急線京都河原町駅よりバス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ、JR京都駅よりバス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
電話番号075-761-4111
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