高知県立美術館ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナ・ガザ地区で続く人道危機、アメリカによるイラン攻撃——。第二次世界大戦の終戦から81年を迎えるいま、「戦争」や「国家」は、私たちの日常から遠い言葉ではなくなりました。先行きの見通せない時代に、当館コレクションによるふたつの特集展示を行います。
特集Ⅰ「戦争」では、オットー・ディックス(1891-1969)、アンゼルム・キーファー(1945-)、宮崎進(みやざき・しん、1922-2018)の作品を通じて、戦争にまつわる表現に目を凝らします。第一次世界大戦に従軍したドイツ人画家のディックスは、1,600万人が犠牲となった未曾有の殺りくを目撃し、600枚のスケッチを残しました。戦後1924年に発表した版画集《戦争》は、その悲惨さを赤裸々に伝える告発の記録です。
本展では《戦争》全50点に加え、第二次大戦中のナチの略奪を題材にしたキーファーの《アタノール》、シベリア抑留の経験をもとにした宮崎の《ラーゲリの壁(コムソモリスク第3分所)》を一堂に紹介します。国家を象徴する国旗。それに関わる表現は、いまなお社会的・政治的な議論の対象です。特集Ⅱ「ヒノマル・イルミネーション」では、柳幸典(やなぎ・ゆきのり、1959-)による同名の大作を、400平米の空間にただ1点展示します。縦3メートル、横4.5メートル。本作はバブル期の繁華街に立ち並んだネオン看板のようなしつらえのもと、赤と白のネオン管がプログラムにしたがって明滅し、日の丸のイメージが絶えず変容します。ネオンが放つ鮮烈な光は、混迷する世界を生きる私たちに、多くの問いを投げかけるでしょう。
ふたつの特集における作家たちの切実な表現を通して、戦争や国家をめぐる想像を広げていただくことを願っています。
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