【インタビュー】 “増大する不安”と内なる圧力を視覚化する。アントン・レヴァが日本初個展「NERVOUS」(DIESEL ART GALLERY)で描く、現代の人々の感情(聞き手:倉田佳子)

1997年生まれ、トビリシ出身。ポスト・マローン、トロイ・シヴァン、野田洋次郎、Tohjiなどの映像作品を手がける気鋭のアーティストが日本で初個展を開催。会期は4月25日〜7月12日

アントン・レヴァ 撮影:Xin Tahara(編集部)

7月12日まで、東京・渋谷のDIESEL ART GALLERYで、日本初個展「NERVOUS」を開催しているアントン・レヴァ(Anton Reva)。写真、映像、コラージュ、プリント、インスタレーションを横断しながら、現代における不安、孤独、アイデンティティの揺らぎを探求してきたアーティストだ。

本展では、全99点の「NERVOUS」と全32点の「WATGT(What Are They Going Through)」というふたつのシリーズを軸に展示。自身で撮影した写真を起点に、紙や光、スクリーン、言葉の断片を幾重にも重ねながら構築された作品群は、どこか詩的でありながら、現代社会に漂う圧力を鋭く映し出している。フィジカルシアター(主に演者の身体的な動きや視覚的表現を通して物語を表現する演劇ジャンル)やヴィジュアル・ポエトリー(視覚詩)から影響を受けたというレヴァに、写真を始めた原点から、視覚表現としてのコラージュ、そして現在進行中のプロジェクトについて話を聞いた。

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写真家としての原点、フィジカルシアターとの出会いから生まれた転機

──10年前ほどのInstagramを遡ると、写真の作品が多くポストされています。今回展示している作品でもご自身で友人を撮影した写真がコラージュ素材として用いられていますね。写真に興味を持ったきっかけを教えてください。

あまり意図せず、興味を持ちました。写真を始めた頃は、そもそも「写真」というものが特別な何かだとも思っていませんでした。友人たちがPlayStationを持っているのと同じように、僕にとってのおもちゃがカメラだったのです。その頃は友達を撮っていました。当時はみんな、自分のSNSのアイコン用にポートレイト写真を欲しがっていたので、気づいたら20人くらいのプロフィール写真を撮っていて、どんどん多くの人が「撮ってほしい」と頼んでくるようになったんです。それから、スケートボードやエクストリームスポーツをやっている人たちなんかも撮るようになりました。

でも2、3年ほど経ってから、「写真は芸術的な表現分野になり得る」と深く理解し始めました。振り返れば、写真を始めて最初の1年くらいで、自分が収集したり、記録したり、それをフォルダごとに整理したりすることにも強く惹かれていたことに気づきました。写真を撮ることは、人生の視覚的な断片を集めているような感覚です。いまでは、150万枚……それ以上の写真が溜まっています。

──そこからコラージュやアート作品へ移行していったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

写真に本格的に取り組んだ当時、頭のどこかで別のものが必要だと感じていました。とくに詩的な表現に触れたとき、言葉がヴィジュアルに転換するような可能性を感じたんです。なかでも、ダダイストの実験的で抽象的な詩やヴィジュアル・ポエトリー、タイポグラフィと言葉の分解の実験につながる芸術にとても興味を持ちました。より予測不可能なものを受け取る方法や、物事を変換する実験的な方法に惹かれていたのです。カメラを初めて手に取った13歳の頃の自分は、とても感傷的でした。そんな自分に、詩的な表現は多くの影響を与え、いまの作風に辿り着いたと思います。

会場風景

──10代の頃に、フィジカルシアターにも影響を受けたと過去のインタビューでおっしゃっていました。

フィジカルシアターは大きな存在でした。友達がアンダーグラウンドな演劇作品に誘ってくれたのが、初めてフィジカルシアターという文脈の作品に触れた瞬間でした。たしか、クシシュトフ・ガルバチェフスキ(Krzysztof Garbaczewski)によるものだったと思うんですが……記憶違いかもしれません。

そのとき、演劇には、人を動かす無数の道筋や要素があると感じたのです。ナラティブ性と演劇体験そのものがあると同時に、多角的な解釈ができる余地がたくさんある。舞台という空間があって、それ自体を操作できたり、さらにスクリーンを組み込めば、別の物語をつなげることもできるし、音や光なども扱える。当時の僕は、友達みんなに「フィジカルシアターの体験を作ることは、表現としてもっとも壮大なことだ」と話していました。

その影響から写真をもっとアッサンブラージュ的な方法で実験するようになりました。つまり、制作において人間をオブジェクトとしてとらえるようになったのです。それを機に、写真の中心が人間から、空間全体へと移り、その空間全体がどんな関係性を共有しているかを見るようになりました。それが大きな転換点だったと思います。そしていまでも変わらず、撮影するときは、空間全体をスキャンするように細かなところまで見ています。ある種、作品制作を短時間のフィジカルシアターのようにとらえているんだと思います。小さな線を加えたり、オブジェを配置したり、指の動きまで意識したりしながら「数分間だけ存在する彫刻」をデザインしているような感覚です。

会場風景
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