公開日:2026年4月20日

「ART OnO 2026」が閉幕。韓国の若手支援から美術館との連携、国際的実験まで多層的な広がりを見せたソウルの春のアートフェア

第3回目となった2026年。韓国や中国から美術館や非営利アート団体、タンザニアなどの20ヶ国以上のギャラリーがアートフェアに参加。

展示風景

韓国・ソウル貿易展示コンベンションセンター(SETEC)で、次世代型アートフェア「ART OnO 2026」が4月5日に閉幕した。今年で3回目となる本フェアには、20ヶ国以上からギャラリーや美術館が参加。若手アーティストの支援、国際的ギャラリー交差する場、非営利のアート機関や美術館が参加するプラットフォームとして、昨年とはまた違った実践を提示した。

売買の場に非営利機関が参加。ソンウンのプレゼンテーション

本フェアの中でも異彩を放っていたのが、韓国の非営利アート機関、ソンウン(SONGEUN) によるプレゼンテーションだ。同団体にとってアートフェアへの参加は今回が初となる。

アートフェア会場の中央にインスタレーションを展開した、ジソン・キム(Ji Seon Kim)は、ソンウンにより支援されてきたアーティストだ。チェジュ島の風景を主題とした初期作品や、近年出産を経験したことを契機に、より抽象化し、色彩も一層カラフルで有機的なものへと変化した近作のペインティングを縦横無尽に配置した。個人的な経験や記憶と土地のイメージが交差する作品群は、静かながら強い印象を残した。

ソウウンの展示の特徴は、作品販売を目的としない点にある。会場にいたソンウンのスタッフに話を聞くと、「今回のフェアへの参加は、あくまで若手アーティスト支援とソンウンの存在を来場者に知ってもらうため」とし、発表機会の創出を目的とした非営利的な取り組みとして、フェアの文脈に新たな視点を持ち込んだ。

展示風景

韓国の公立美術館、中国の美術館の参加

韓国国内からは、水原市立美術館(Suwon Museum of Art) と全南道立美術館(Jeonnam Museum of Art)が初参加。設立から5年を記念して全南道立美術館は、インドネシアのアーティスト、マリアント(Maryanto)などコレクションを軸に、自然と人間の関係性をテーマとした展示を行った。

Maryanto Anthropogenic 2019

水原市立美術館(Suwon Museum of Art)はフェミニズムの視点に基づくコレクションを形成してきた。近年では、その関心領域はジェンダー、身体、関係性、ケアといった主題へと拡張している。ブースではコレクションから、クレール・フォンテーヌ(Claire Fontaine)、キム・スンギ(Kim Soungui)らの作品を展示した。

水原市立美術館(Suwon Museum of Art)

上海の美術館、fibre/áunn museumのブースではザン・イン(Zhang Ying)によるインスタレーション作品《Alienated Galaxy Operating System K》(2026)が展示された。

fibre/áunn museumブース風景

タンザニアのギャラリーが韓国のフェアに参加する理由

タンザニアのランギ・ギャラリー(Rangi Gallery)は、タンザニア国立美術館のキュレーターであり、ヴェネチア・ビエンナーレのタンザニア館も手がけるローナ・ベネディクト・マシバ(Lorna Benedict Mashiba)によって設立された。マシバは「アジアでは、アフリカ、とりわけタンザニアのアートに触れられる機会はまだ限られている。ご縁があって今回参加することになったが、人や作品の移動に多くの困難が伴う時期でもある。それでも挑戦する姿勢を大切に、タンザニアのアートを紹介したい」と語る。ギャラリーは、ローカルアーティストを国際的な文脈へと接続することを目指し、タンザニア現代美術の豊かな多様性を提示した。

ヴァレリー・エー・アマニ(Valerie A Amani)
トゥラケラ・エディサ・ギンド(Turakella Editha Gyindo)

日本からの参加ギャラリーの視点。市場への適応と実験のあいだで

日本から参加したギャラリーにとっても、ART OnOはたんなる販売機会にとどまらず、それぞれの戦略や姿勢が色濃く表れる場となっていた。

AISHOは、昨年の出展においてセールスが思うように伸びなかった経験を踏まえ、今年は“リベンジ”の参加となった。今回は韓国のコレクター層を強く意識し、スペイン人アーティストのハビア・カジェハ(Javier Calleja)、水戸部七絵、佐藤正樹の作品を展示し、嗜好に合わせた作品構成で臨んだという。実際に初日から来場者の反応は良好で、新たなコレクターへの販売にもつながった。昨年は十分に得られなかった手応えを、今年は確かなかたちで感じ取る機会となったようだ。

ハビア・カジェハ
水戸部七絵

いっぽう、MISAKO&ROSENは、マーケットに最適化された“売り作品”でフェアに挑むのではなく、ウィル・ローガン(Will Rogan)の個展形式を採用。マーケットからこぼれがちな作家の実践そのものを伝えることを優先した構成である。

同ギャラリーにとって、作品の販売は重要な要素でありながら、それだけがフェア参加の目的ではない。むしろ、ソウルという都市の文化や空気感を体感し、その文脈のなかで作品を提示すること自体に大きな意義を見出している。こうした姿勢は、アートフェアを単なる取引の場としてではなく、文化的な接続点としてとらえる視点を示していた。

ウィル・ローガン
ウィル・ローガン

ART OnOのディレクター、ノ・ジェミョン(Noh JaeMyung)は「非営利機関、アーティスト、コレクターがひとつのプラットフォームで出会う構造は稀な試みであり、今回のフェアを特徴づける重要な要素となる」とコメントしている。

「ART OnO2026」には子連れの来場者も楽しめるキッズスペースがあり、リラックスした余裕のあるムードがあった

諸岡なつき

「Tokyo Art Beat」 Head of Sales

諸岡なつき

「Tokyo Art Beat」 Head of Sales

2015年5月より「Tokyo Art Beat」で勤務。

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