公開日:2012年12月4日

前編:あたらしいTokyo Art Map 誕生?<br>ワークショップの過程をご紹介!

紙ならではの良さとは? フリーペーパーだから実現できるアイデア

旬な東京のアート情報が地図と共に掲載されているTokyo Art Map(以下アートマップ)は、カフェやギャラリーなど500カ所以上に設置されているポケットサイズのフリーペーパーです。このアートマップは今から4年前、「アートやデザインとの出会いを促進する紙メディアを作りたい」という想いのもと誕生しました。当初から発行部数は10万部と多く、美術館などのアートスペースはもちろん、駅や文化施設、カフェやレストラン、アパレル系やデザイン系のショップ、大学、ホテル等々へ設置し、日本人だけでなく外国人や旅行者にも利用されてきました。
その一方、最近ではスマートフォン等の普及に伴い、新聞や雑誌などの紙媒体以外に、ウェブサイトやアプリで情報を得る機会が多くなり、情報取得の手段が変化してきています。TABのサービスも、その変化に伴い、アプリやTwitterによる情報提供など、多様性を増してきました。

みなさまお馴染みの現行版アートマップがこちら

そんな情報化社会のなか、紙ならではの良さやフリーペーパーだからできることとは何か、改めて考え直そうとTABスタッフは思いました。そこで、いま一番求められているアートマップ像とは何か、調査やワークショップを通してチームのみんなで考えることにしました。

1. アートマップをどのように使っていますか?
読者のみなさんは、現在どのようにアートマップを使っているのでしょうか。まずはそれを再確認するため、読者にインタビューやアンケート調査を行いました。すると、人それぞれに違う視点や使い方があることがわかり、次のようなコンテンツやデザインの方向性が見えてきました。

・アートマップの特集からイベント欄までどちらも熟読している層と、現在注目のイベントを知るために全体的にざっと目を通している層がいる。TABとしては、どちらのニーズも満たし、両者にとって魅力的なアートマップを目指していきたい。

・調査の結果、約半数の人がアートマップとTABのアプリ版を併用しており、残りの半数がアートマップのみを利用している。アートマップならではの魅力的なコンテンツがあることはもちろん、東京のアートシーンの必要な情報がアートマップだけで取得できるような、どちらにも利用価値のあるものにしていきたい。

・「アートマップを毎号部屋に貼って、いつも情報が目に入るようにしている」「行きたい情報だけを切り取って、手帳に貼っている」「気になるイベントに赤ペンで印をつけて、すぐにわかるようにしている」など、たくさんのオリジナルな使い方があるようでした。このように二次的な使用が広がるデザインにすれば、利用方法のバリエーションも増える可能性があることに気づきました。

これらの結果を踏まえて、いよいよ新しいアートマップのための内部ワークショップがスタートしました!

2. 紙だからこそできること
ワークショップの始めに、まずはアイスブレイク……「紙にできること」を動詞で思いついた順に書き出していきます。「折る」「破る」「包む」「貼る」「書き込む」「送る」「はさめる」等。「折る」では折り紙、「包む」では包装紙、「書き込む」では手帳など、世の中には多様な形で紙が存在していることに気付き、紙ならではの可能性を感じます。

「紙だからできること」をワークショップ中

3. アートマップ × ○○ …新しく生まれるもの
アートマップとは、「アート・デザインとの出会いを促進することを目的に、広告収入で運営される紙メディア」です。先ほどのアイスブレイクで出たことばを参考にして、紙=アートマップでどんなことができるのか、アイデアを出し合いました。
今後のアートマップの姿を考える上で参考になりそうな多くの意見が出ましたが、特に好評だったのは、「恋人同士がアートマップを見ながらデートの道順を考える」という使われ方。アートマップを広げながら、今度行くデートプランをおしゃべりする様子がイメージできます。他にも、「アート好きなら持っているべき、オシャレなアイテム」や「カフェなど、美術館周辺のお気に入りスポットを、地図に書き込むことができる」など、概念的なことや機能的な側面に注目した意見もたくさん出ました。

4. アートマップ編集長になりきってみる!
ワークショップも徐々に盛り上がってきた中盤戦、ここでは「編集長」と「読者」の立場に立って、企画のアイデアを考えました。

アイデアを書いた紙を壁に貼って、みんなが見やすいようにしています。

編集長の立場からは、雑誌の読者モデルのように各エリアごとにエリアの顔となる読者を選び、実際に行ったイベントや付近のオススメカフェ等を教えてくれるという企画など、内部のスタッフ体制も視野に入れた意見が出ました。

一方、読者の立場からは、新しいコンテンツのアイデアが中心でした。例えば、著名人によるリレーコラム、「アート×ファッション」といったTABならではの視点で特集する、などなど。TABならではのオリジナリティが求められていたように感じます。

編集長と読者、どちらの立場においても、アートマップが使われている場面やどうやって使ってほしいかを想像し、ユニークなだけでなく実現可能なアイデアが生まれたと思います。

5. 次号!新しいアートマップの姿とは…!

デザインや形状に関しては、調査から得られた読者のみなさんの情報紙を越えた利用方法はとても参考になりそうです。また、初めて手に取る人のことを常に念頭に入れ、少し開けばすぐに地図機能をもつガイドだとわかっていただけるような工夫も必要だと感じました。

ワークショップを実施した甲斐あって、様々な可能性を知ることができました。その中で共通していたのは、TABだからできることや、フリーペーパーという紙媒体だからこそできること、という特性を活かしていきたいというものでした。

アートマップはどのような姿に変わっていくのでしょうか?次回はその一部を公開します。お楽しみに!

[TABインターン]
田村悠貴:高校生のときにアートでまちを活性化する事業に関わって以来、日常生活にアートを滑り込ませていく活動や、人格や感情がどのように作品に表出しているかに興味をもつ。現在は大学院で、カフェや美術館の心理的機能について研究をしながら、心理学とアートの狭間を探索中。喫茶店がとても好き。

TABインターン

TABインターン

学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。