最終更新:2021年11月17日

最新マーケット情報、香港のM+がついに開館、まだまだ盛り上がるNFTなど:今週の世界注目ニュース

ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目ニュースをピックアップ。

いま、世界のアート界では何が起こっているのか? ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目のニュースをピックアップ。今回は、10月14日〜11月13日のあいだに世界のアート系メディアで紹介されたニュースを「アートマーケット」「できごと」「まだまだ盛り上がるNFT」「おすすめの展覧会、読み物、映像」の4項目で紹介する。

M+ Photo: Kevin Mak © Kevin Mak Courtesy of Herzog & de Meuron

アートマーケット

◎好調に見えるオークション結果の内訳
11月9日から約2週間はNYのオークションシーズン。初日の9日はクリスティーズで21世紀アートのイブニングセールが行われた。バスキアやピーター・ドイグの40億円超えやBeepleの30億円など総額250億円と好調に見えるが、多くは当日の入札無しで、最低見積もり額で事前約束のあった保証人に渡ったようで、結果は単純ではなさそう。
https://news.artnet.com/market/christies-21st-century-evening-sale-nov-2021-2032451

◎ゴッホ、ウォーホルがツートップ
11月1日に開催されたクリスティーズの近代と20世紀アートのイブニングセールでは、あわせてなんと850億円以上の売上(事前の落札予想額の上限合計は約570億円だった)。近代ではゴッホが80億円超、20世紀はウォーホルによるバスキアの肖像画が45億円でトップロットだった。
https://www.artnews.com/art-news/market/christies-modern-art-sales-van-gogh-warhol-1234609891/

◎バンクシーのシュレッダー作品が再登場
10月のロンドンのサザビーズのオークションでは、3年前に約1.5億円で落札された直後に作品が自動的にシュレッダーで切り刻まれたバンクシーの作品が、そのまま再度オークションにかけられた。なんと予想落札価格の3倍の29億円で、アジア人コレクターが落札。また、イブニングセール全般でもアジア人コレクターが強く、会場でパドル(落札希望する際に掲げる番号札)を上げる人は少なく、電話やオンラインからの買い手がほとんど。また若手の作家に人気が集まった。
https://news.artnet.com/market/asian-buying-sothebys-london-2020634

◎2年ぶりのFriezeも盛況
2年ぶりにロンドンで開催されたFriezeアートフェアはヨーロッパ以外のお客も来て盛況のよう。世界有数の大手ギャラリーにて売れた作品を価格付きで紹介。なかでも驚きは、アメリカ人黒人画家ケリー・ジェームズ・マーシャルの絵画が最近人気急上昇中とはいえプライマリーで2.5億円以上もすること。
https://www.artnews.com/gallery/art-news/photos/frieze-london-2021-sales-highlights-1234606937/marke0254/

できごと

◎香港のM+がついに開館
2017年より数回の延期を経て、香港のM+がついに開館。規模感ではNYのMoMAやロンドンのTateモダン、パリのポンピドゥーと並ぶ巨大美術館。香港のコロナ規制でまだまだ海外からは行きにくいが、初年度は入場料無料にして地元志向に。広い館内の展示の様子や、関係者からのコメントを紹介したレポート。
https://www.artnews.com/art-news/news/m-plus-museum-opening-hong-kong-2021-report-1234609957/

◎シモン・リーがまたギャラリーを去る
来年ヴェネチア・ビエンナーレの米国館を代表する初の黒人女性作家Simone Leigh(シモン・リー)が、メガギャラリーのハウザー&ワースを辞めることに。次の所属は発表されていない。2020年にNYとLAの大手ギャラリーから移ったばかりだった。ギャラリーとの良好な関係はどういうものか探っているとのこと。
https://www.artnews.com/art-news/news/simone-leigh-departs-hauser-and-wirth-1234608364/

◎「ザ・ブロード」で知られる財団はどのようにコレクションを貸し出すか
世界有数のアートコレクションを誇るLAのブロードアート財団。1984年の設立から、コレクションを世界中の美術館などに貸し出すことに注力してきた。貸し出しプロセスがどのようなものかをインタビュー形式で紹介。これまで世界中600の施設に8700以上の作品を貸し出してきたという。
https://www.artnews.com/art-news/news/broad-art-foundation-museum-loans-1234605668/

◎超富裕層に人気の「部分的寄贈」
アメリカでは超富裕層への課税が検討されているが、高額な絵画の美術館への部分的な寄贈が人気を高めているという。部分的寄贈をすることで作品は所有者と美術館のあいだを行き来する、税制優遇を受けながら絵画を家に飾れるという仕組み。富裕層がコロナ禍で複数の持ち家を行き来するようになり、家をあけることが増えたことが人気の背景にある。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-02/how-do-the-rich-avoid-taxes-billionaires-use-this-art-strategy

◎失墜したアーティストは死後、どのように評価されるか
チャック・クロースは巨匠画家であったが、2017年に複数の女性からセクハラで訴えられ展覧会などもキャンセルになり失墜。今年8月に亡くなった。作家の死後、作品の評価を回復できるのかについて、過去の経緯も含めて丁寧に追った記事。
https://news.artnet.com/art-world/chuck-close-legacy-2027910

◎失われた作品が博物館に収蔵されるまでの物語
フォーク・アートの巨匠で1937年に黒人作家として初めてMoMAで個展を開催したウィリアム・エドモンドソン(William Edmondson)の、失われたと思われていた作品がセントルイスで見つかった。その作品が最終的には、NYのアメリカン・フォーク・アート博物館の理事のひとりでもある作家のKAWSによって同館に寄贈された。その数奇な経緯を追った記事。
https://news.artnet.com/art-world/kaws-donates-william-edmondson-discovery-folk-art-museum-2029002

◎『イカゲーム』セットのインスピレーション
世界中で大人気のNetflixの『イカゲーム』のプロダクション・デザイナーが、ドラマのセットのデザインにあたってインスピレーションを受けたアート作品などについて語っている。特にM.C. エッシャーの《Relativity》とジュディ・シカゴの《The Dinner Party》について。
https://www.architecturaldigest.com/story/squid-game-production-designer-shares-story-art-references

◎リチャード・タトルの「触れる」アート展
来年の2月にNYのバード大学のアートセンターで作家リチャード・タトルの「アート」コレクション展「What is an Object?」が開催される。蒐集された様々なモノをタトルがどこでどう見つけたのかの記述とともに展示され、来場者がそれらのコレクションを触ることができる。コレクション展だが、その展示のコンセプトなども含めて本人作品の延長のようでもある。
https://www.artnews.com/art-news/news/richard-tuttle-art-collection-exhibition-1234608991/

◎未だコロナ禍前には及ばぬ状況
11月8日からワクチン接種などを条件に、これまで渡航制限があった海外の多くの国からアメリカに入国しやすくなった。ただ現状、メトロポリタン美術館は未だにコロナ前の半分の入館者とのこと。ブロードウェイやオペラも15〜20%のチケット売上が海外からの旅行者ということで、今後の回復を待っている状況を解説した記事。
https://www.nytimes.com/2021/11/08/arts/nyc-museums-theater-opera-international-tourists.html

◎ダ・ヴィンチ作ではなく、工房作へ
スペインのプラド美術館で開催中のレオナルド・ダ・ヴィンチ展のカタログによると《Salvator Mundi》はダ・ヴィンチ自身の手によるものではなく、ダ・ヴィンチの監督の元での工房による制作のカテゴリーに入れられた。2017年にダ・ヴィンチ自身の作品として競売史上世界最高額の500億円超で落札された作品。
https://www.artnews.com/art-news/news/prado-museum-leonardo-exhibition-salvator-mundi-1234609851/

◎スケボー禁止令に批判集まる
リノベーションの末、今夏再オープンしたベルリンの「新ナショナルギャラリー」。前方の広場にスケートボードをするキッズが集まっていたが、建物や彫刻の保護を目的に美術館がスケボーを禁止に。ハイカルチャーからのストリート文化の締め出しだと大きな批判を集めている。
https://www.theartnewspaper.com/2021/11/11/skateboarders-sign-petition-against-berlin-neue-nationalgalerie-ban

まだまだ盛り上がるNFT

◎NFT関連パーティも盛況
今年になってNFT作品の高額落札で一気にアート業界に乗り込んだBeepleが、今回はクリスティーズの21世紀アートのメインであるイブニングセールに入る時代。NYではそれに先駆けて、NFT. NYCという4日に渡るカンファレンスが開催されていた。カンファレンス外でNFT関連パーティがNYのあちこちで行われ、関係者だけでなく、セレブリティたちも見かけられたようで、大きな社会的注目とお金が急激に集まっている様子が伺える。それらのパーティレポート。
https://www.artnews.com/art-news/news/nft-nyc-conference-parties-1234609312/

◎バーゼルもNFTの波に
来月のマイアミのアート・バーゼルでは、インタラクティブなNFT展が併設され、レクチャーなども行われるそう。ついにバーゼルもNFTの波に乗る。
https://www.theartnewspaper.com/2021/11/09/tezos-brings-artificial-intelligence-and-nfts-together-at-art-basel-miami-beach

おすすめの展覧会、読み物、映像

◎売れっ子作家が贋作を制作?
5年前には若手の超売れっ子画家だったクリスチャン・ローザ(Christian Rosa)がレイモンド・ペティボンの絵画を偽造したとしてFBIの捜査が開始された。そんななか、本人はアメリカから脱出したと伝えられている。事件の過程を様々なソースからの聞き取りをもとに生々しく描いた映画のような長文記事。
https://www.vanityfair.com/style/2021/10/christian-rosa-indictment-disappearance

◎注目レビュー記事
NYローワー・イースト・サイドのbitformsギャラリーで開催中のアディー・ワーゲンクネヒト(Addie Wagenknecht)個展のレビュー記事。ホイットニー美術館で開催中のジャスパー・ジョーンズへのリファレンスから、コロナ、アメリカそしてNFTと、うまいなあという印象。
https://hyperallergic.com/691724/addie-wagenknechts-fraying-of-america/

◎ジェフ・ウォールの作品解説映像
カナダの写真作家ジェフ・ウォール(Jeff Wall)がワシントンDC郊外で2018年にリニューアル開館したGlenstone美術館で個展開催中。彼の巨大写真作品を解説する公共テレビ局PBSのショートビデオがわかりやすい。
https://www.pbs.org/newshour/show/how-photographer-jeff-walls-pictures-duplicate-magic-of-large-scale-paintings

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Kosuke Fujitaka

Kosuke Fujitaka

1978年大阪生まれ。東京大学経済学部卒業。2004年、Tokyo Art Beatを共同設立。08年より拠点をニューヨークに移し、NY Art Beatを設立。アートに関する執筆、コーディネート、アドバイスなども行っている。

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