公開日:2007年6月18日

DIVVY/dual プロジェクト#1「TYPE-TRACE」

DIVVY/dualの5日目ということで、あえて詳しい説明は省くとしよう。簡単にまとめると、このプログラムは自分がタイプする文章を記録するだけでなく、それをどのようにタイプしたのか、言葉と言葉の間にどれだけ時間を空けたのか、どの字でつまずいたかなどを視覚的に表すものである。

だから間違えや戸惑い、迷いや興奮などが全てあらわになる。つまり、あまり考えすぎていると、次にその考えを言葉としてタイプした時、その言葉は勢いよく画面に爆発する。迷ったり、悩んだりしてやっとの事でタイプした言葉がこんなに大きく表示されるのもなんだか不思議である。

まだこのプログラムは第一段階という事なのだが、使っているうちに様々な事に気づく。例えば、大きい文字が見たいがためにわざと長い間待ってからタイプしても、文字の大小に限度があるので、画面がいっぱいになるほど巨大な文字が飛び出てくるわけではない。そして逆に、猛スピードでタイプしたら蟻のように小さい字が連なる、というわけでもない。それはきっと、ある程度の限度が無ければアート作品、展示作品、そしてプログラムとして収拾がつかなくなるからだろう。だがそんな事を気にせず、字の大きさが時間の経過を直接表すような、もっと大胆な感じでも面白いと思う。例えば私が今からコンビニに行って帰るまでの5分間、文字のエネルギーがその分だけ蓄積される。そして5分後にタイプする最初の文字は、画面一面に収まりきらないほどの巨大文字として現れる。そしてもちろん、早くタイプすれば文字は読めないほど小さく、ギュウギュウ詰めに並ぶ。文字間隔なども弄れれば、より時間の経過がビジュアルとして現しやすいかもしれない。または、タイプする時にキーボードを押す指圧によって色や文字の太さが変わる、というのもイイと思う。

でも、もちろんこれらはパソコン/機械オンチな私が勝手に想像しているだけであって、はたして実際そのような事が可能になるかはわからない。だが、今日このType Traceを使ってみて、私はこんな可能性や希望を感じた。

Lena Oishi

Lena Oishi

日本生まれ、イギリス+オーストラリア育ち。大学院では映画論を勉強。現在はVICEマガジンやアート/メディア関連の翻訳をはじめ、『メトロノーム11号—何をなすべきか?東京』(2007年、精興社)の日本語監修など、フリーランスで翻訳関連の仕事をしている。真っ暗闇の中、アイスクリームを食べながら目が充血するまで映画を観るのが好き。