
会場風景より、手前は《ダイアナ、プリンセス・オブ・ウェールズ》(1999)
現代美術作家・杉本博司の大規模個展「杉本博司 絶滅写真」が、竹橋の東京国立近代美術館で開催されている。写真作品を主体とした美術館での個展としては、国内では2005年の森美術館の「杉本博司:時間の終わり展」以来、21年ぶりとなる。会期は6月16日から9月13日まで。
杉本は1948年、東京生まれ。1970年に渡米し、1974年以降はニューヨークと日本を往還しながら制作を続けてきた。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」、翌年に公益財団法人小田原文化財団を設立。2017年には10年の構想を経て、相模湾を望む高台に文化施設「江之浦測候所」を開いた。古美術蒐集から舞台芸術の演出まで、その活動は領域を越えて広がり続けている。

「今、写真から何が絶滅したのか。それは写真の証拠能力に他ならない」と杉本は語る(プレスリリースより)。デジタルへの移行によって、写真が長らく保ってきた証拠能力は失われつつある。杉本に言わせれば、デジタルは嘘をつき、写真は嘘をつかないのだ。だが本展が指し示す「絶滅」のヴィジョンは、そこにとどまらない。半世紀をかけて写真表現の可能性を押し広げてきた杉本の仕事の全体を見わたすとき、その底に通奏低音のように響いているのが「絶滅」という主題なのである。1970年代後半の初期作から最新作まで、銀塩写真およそ60点。3章に分けて並ぶ会場を、順にめぐっていきたい。
