公開日:2018年8月24日

アートコレクションのススメ!! – 作品のコレクションを検討するために

Xu Zhen Store、PROJECT501、そして現代美術ヤミ市について

アート作品を買う人は、どのようなきっかけで、はじめての作品を購入したのだろうか。一度作品を買ってみると、また買いたいという気持ちになるとよく言われている。今回は、アート作品を買いたくなる、きっかけになるような企画を3つ紹介したい。

Xu Zhen Store

実際コマーシャルギャラリーやアートフェアで作品が動く(取引される)のを目にすることはあまりないのではないだろうか。場合によっては高額で買うという行為が少し非現実的に感じられるかもしれない。中国人作家の徐震®(シュー・ジェン)は、最近そのようなアートマーケットの買いづらさ自体をコンセプトに取り込んだプロジェクトを展開している。上海を拠点に世界的に活躍する徐震®は、並んでいる商品がすべて空っぽだけれどコンビニそっくりな空間(展示)を街中に出現させたり、「美術商品」を生産する会社MadeIn Companyを設立し、ポップアップストアXu Zhen Storeで作品を販売したりすることで、アート作品を買うという行為を少し違った視点から見せてくれる。「今の中国ではアート作品を買うという市場がそこまで成熟しているわけではないので、その入口を作り、市場を広げ成熟させたい。」(東京展のプレスリリースより)とあるが、これは日本も中国とあまり変わらない状況と言えるかもしれない。

AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMAのXu Zhen Storeの様子 Photo: oboko

上海のXu Zhen Storeでは、量産化された「作品」を「ブティックで洋服を買う」ように販売しており、洋服やファッション小物も展開しているようだ。そして、現在、東京青山のAKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMAでもXu Zhen Storeが開店中だ。高級な雑貨屋さんのような空間であるが、作品が並ぶ棚の下には、作品梱包用の箱が積まれていたりする演出によって、規格化された量産型のものを販売していることが誇張されている。訪れてみるとアートギャラリーとセレクトショップなどの店舗は、確かに空間的に明らかに異なっているものだということがよくわかる。作品に値札がついていたら、さらにお店らしかったかもしれない。9月1日まで会期延長となり、新商品の入荷も予定されているようだ。

PROJECT501

1964年東京オリンピックの年に建てられたという明治通り沿いの印象的なアパートの1室に、作品をコレクションする事を身近に感じさせてくれるアートスペースが7月末にオープンした。様々なアートコレクターが持っているコレクションの一部を紹介しながら、そのコレクターが注目している作家の作品を販売する、というコレクターを中心に据えた企画を行う形式だ。トークイベントなども予定されており、コレクターと交流できる機会も用意されている。コレクターが注目しているという事は、評価軸が定まっていない作品に対するひとつの指針となり得る。例えば、3331アートフェアでも、コレクターによる推薦を行っている。もうひとつ、ここでは、コレクションを育てる(増やす)ということについても考えることができる。好きなものを買って集めることはもちろんだが、コレクションを見ることによって、コレクターの好みや考え方を見取ることができるのは魅力的でおもしろい。アパートの1室ということで少し入りづらいのだが、スペースのオーナーが丁寧に作品の説明などもしてくれるので、気軽に立ち寄りたい。

PROJECT 501があるのは堀田英二設計の集合住宅「Villa Bianca」で都内の有名な建築スポットの1つでもある。 photo: oboko

現代美術ヤミ市

7月21日・22日の2日間、カオス*ラウンジとSIDE COREが主催した現代美術ヤミ市。会場は両日ともかなり混雑した。出展者はオルタナティブスペースや、ギャラリーに所属していない作家が多かった。カオス*ラウンジの黒瀬は、コマーシャルギャラリーやアートフェアという既存の現代アートマーケットとは異なる作品流通を模索している。「……(略)その魔法の現場に、プロセスに、立ち会うこと、「共犯」になること。 それが可能な場所こそ、現代美術のマーケットであり、教育の現場であり、イベントであり、コミュニティなのではないか。」(現代美術ヤミ市特設ページより引用)と書いているように、今回の現代美術ヤミ市は、作家がいて、実際に制作していたりするような場で、作家から直接対面で、作品の断片だったり、作品だったり、作家が集めてきたものを買う場であった。価格もその場で話し合って決めたり、作家同士が作品を交換していたりする場合もあった。作家と買う人の境界は曖昧で、交流の場であり、確かにみんな「共犯」関係にあるようだった。

現代美術ヤミ市の会場 photo: oboko

特にTwitterのハッシュタグ「#現代美術ヤミ市」を見るとその熱気がよく伝わってくる。さらに、現代美術ヤミ市に参加した多くの人が、買った物の写真をTwitterなどに上げていることが印象的だ。気に入った作品を手に入れることができて嬉しいという、アート作品を買う上で最も大切なことが自然にできる場であり、それを共有できる場であったのではないだろうか。次回の開催は未定だが、今後継続して開催していくことを期待したい。

筆者は現代美術ヤミ市で買った 海野林太郎(カタルシスの岸辺メンバー)の作品と晩酌を楽しんだりしています。

アートを見る人が増え、その先にアート作品を買う人が増えれば、アート界全体が活性化する。そのことについて今、様々な議論が活発になされている。自分がアート作品を買ったり、コレクションしたりするためにはどのような環境が必要か、について考えを巡らせてみるのも良いのかもしれない。

■ 徐震®︎『Xu Zhen Store』展
日程:2018年5月24日(木) ~ 9月1日(土)
11:00 〜 19:00(13:00 〜 14:00 CLOSE)
日曜、月曜、祝日休廊
会場:AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMA
ウェブサイト:http://www.akionagasawa.com/jp/exhibition/xu-zhen-store/

■ LOVE ART file 1 : Nayo
日程:2018年7月28日(土) ~ 8月26日(日)
月・金 15:00 〜 19:30
土・日 13:00 〜 19:00
会場:PROJECT 501
ウェブサイト:http://project501.tokyo/news/

■現代美術ヤミ市
日程:2018年7月21日(土)、22日(日)※終了
ウェブサイト:http://chaosxlounge.com/yamiichi/

oboko

1988年生まれ。「いま・ここ」に生まれてくるサイト・スペシフィックな作品に特に興味がある。アートコレクター初心者。展示企画・翻訳などもします。