最終更新:2007年6月21日

村上隆さんとのKAIKAI KIKIインタビュー

アーティスト村上隆さんが主宰する会社Kaikai Kiki。アーティストの育成、アートフェスティバルGEISAIの開催、そしてその他のアート関連事業を行うこの会社は、最近英語のウェブサイトを立ち上げ、ますます国際的な活動が期待されます。今回は村上隆さんにKaikai Kikiの今、そして未来について話を伺いました。

写真:Kaikai Kikiアーティスト、タカノ綾(上)とMr.(下) 写真提供: miget

Kaikai Kikiは主にスタジオ・事務所形式で、所属アーティストの作品を展示するスペースは今まで無かったようですね。

今月末にKaikai Kiki本社の地下室にギャラリーが完成します。ここは一般の方に作品を紹介する場では無く、エクスクルーシヴなお客様、プレスの方などに限定した、閉鎖的な場にしようと思っています。

その理由は?

年2回開催しているアート・マーケット、GEISAIで一般の方々を大勢集める場を提供しているので、パブリックはGEISAI、プライベートはギャラリーとコントラストをつけたいからです。ギャラリーは、本質的にアートが理解出来る人間にのみ来て欲しい。

以前、村上さんはアニメやマンガこそが日本独特のアートだと論じましたが、Kaikai Kikiの所属アーティストの作品も皆アニメ色が強い気がします。

たまたま僕のところに寄ってくるアーティスト志望の方はそういう傾向が多かった。戦略的にアニメ色を打ち出した訳ではないんです。自然とそれっぽい作品を作るアーティストが集まってきた。あと、見た目、コンセプチュアルアート的な作家を育てるという意識も僕自身にあまりない。つまり日本人の本質とは何かを僕なりに突き詰めると、こうなった、という感じです。

日本は今後もアニメ色が強い、ポップなアートが主流であり続けると思いますか?

マンガ界を例に挙げるとわかりやすい事があります。90年代初頭、少年ジャンプが600万部越えしていた時少年マンガ全盛で『ドラゴンボール』的世界観が蔓延していた。そして少女マンガの影は薄かった。でも今は『NANA』とか『ハチミツとクローバー』みたいに、少女マンガが映画化されたり、社会現象を起こすようになった。それと同じで、狭い範囲であっても流行廃れはあるので未来を予測は出来ません。ただ、できればKaikai Kikiの正直なスタイルで、死ぬまでサバイバルできればいいな、とは思っています。

Kaikai Kikiの所属アーティストを増やす予定はありますか?

これからアートは凄く大きなビジネスになっていくでしょうから、そういう可能性のあるアーティストがいれば自然と増えて行くでしょう。音楽レーベルに特色があるように、うちのスタジオも既に特色は出てますから、そこから無理やり脱出する必要を感じてはいず、自然な形で運営して行きたいです。

ニューヨーク、ロングアイランドシティにもKaikai Kikiのスタジオ・事務所があるようですが、こちらはどのような活動をされていますか?

ギャラリーとオフィス、スタジオが同じビルの中にあります。大きな規模のスタジオです。Kaikai Kikiの仕事のほとんどは日本国外の物です。その情報のとりまとめや、要人との直接のコンタクト、そして急いでいる作品の制作やリペア等がNYスタジオでの業務です。ギャラリースペースでは日本ならではの物の紹介をしようとしています。例えば陶芸品とか、芸能人のアート作品とか。

今後、Kaikai Kikiのアーティストを更に国際的に売り出していこうという意向などはありますか?
今年の6月にスイスのバーゼルのアート・フェアに行ったときにビックリしたのが、今アート・マーケットそのものが爆発しちゃった事です。本当の爆発。なんでもかんでも売れて売れて売れまくっている。アート・ファンのお客さんは、アートであれば何でもいいんです。本当にいろいろな画廊さんが出展している中、お客さんはまるで飢餓状態のように、ものすごい量のアートを買っていく。今回のフェアに来場したプライベート・ジェットは140機以上、初日の売り上げは4兆円。まさに巨大な産業になっている。

ビートルズが出てきて、音楽産業が爆発したのもこんな感じだったのかな、と思いました。当時はビートルズやストーンズ、ジミー・ヘンドリックス、ボブ・ディランが爆発して、自分たちでレーベルを作ったり世界ツアーが始まったり、ウッドストックみたいなフェスティヴァルが始まった時期でした。で、それぞれをマネジメントするプロデューサーやマネージャーが出て来てある程度のインフラが出来上がって行った。今のアートマーケット爆発の背景には移動インフラの完全整備があると思います。つまり作品も人も安価で安全に移動する。もしくはプライベートジェット的にゴージャスに個人で移動する。故に世界で一つしかない物に出会える。世界に手が届く今、『物』であるアートを自分の手元に引き寄せる事が出来るようになったんだと思います。腕のあるアーティストは今後引く手あまたになってくと思います。

では、日本のアートもこれから爆発、という感じですか?

来年になればみんなわかります。ビックリするほどの巨大な波なので、知らないではすまなくなってしまうんです。音楽産業の例が続きますが、僕たちが子供の頃はレコード=ドーナツ盤のシングル、もしくはラジオのエアチェックをカセットテープで楽しんでた。で、CDが出てハイクオリティな音質の再現が可能になって音楽産業は爆発。著作権利の問題が出つつもナップスター等のような、僕らの時代のラジオ、エアチェック感覚が成長した。で、その延長線上の合法路線がiTunesみたいな物が出て来た。形は変われどインフラ整備が続けば業界は発展するんです。

これは世界規模で、ですか?

そうです。だってプライベート・ジェットでフェアに来て、作品を買ってくってストーリー、かっこいいじゃないですか。GEISAIにも何組かのそう言う人達が来ます。で、買った作品の使い道も友達にプレゼントとしてあげたり、家でパーティーを開いて購入したアートを見せびらかしたり。結局は自分自身の個性を表現出来るんです、アートコレクションって。こんなライフスタイルはたぶん日本にも伝染して来ないはずは無いんです。

村上隆さん、興味深いお話をどうもありがとうございました! 

Kaikai Kikiのオフィシャル・ホームページはこちら

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Lena Oishi

Lena Oishi

日本生まれ、イギリス+オーストラリア育ち。大学院では映画論を勉強。現在はVICEマガジンやアート/メディア関連の翻訳をはじめ、『メトロノーム11号—何をなすべきか?東京』(2007年、精興社)の日本語監修など、フリーランスで翻訳関連の仕事をしている。真っ暗闇の中、アイスクリームを食べながら目が充血するまで映画を観るのが好き。

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