KYOTOGRAPHIE会場にて
今年で14回目を迎える「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が、京都各地を舞台に幕を開けた。会期は5月17日まで。町家や寺院、歴史的建造物から現代建築まで、京都各地の空間を写真のために再解釈する独自のスタイルで知られ、2013年の初開催以来高い評価を獲得してきた。2024年の来場者は約30万人、累計は210万人を超え、いまやアジアを代表する写真祭へと成長している。今年は、8ヶ国14組のアーティストが参加する。
今回のテーマは「EDGE(エッジ)」。際(きわ)に立つときの緊張感、境界が揺らぐときの不安定さ。写真というメディアもまた、記録と芸術、真実と虚構のあいだを揺れ動き続けてきた。会期中に訪れた各会場のなかから、とくに注目したい6組の展示をレポートする。

東本願寺の東側に、蔦におおわれた重信会館がある。1930年に竣工し、真宗大谷派の学生寮などとして使われてきたこの建物は、2001年に閉館して以来、通常は非公開となっている。そこで開かれているのが、フランス人写真家ユニットのイヴ・マルシャン&ロマ・メェッフェルの展示「残されるもののかたち」だ。
1階のアール・デコ様式のシアタールームでは、15年間かけて集めた元劇場の作品《Theaters》(2005〜21)が投影される。地下には軍艦島を撮影した《Looking South from the embankment, Gunkanjima》(2012)、2階と3階にはこれまでの作品が数多く展示されている。屋上にも仕掛けが用意されており、建物全体を使った展示構成となっている。



ふたりが廃墟の撮影を始めたのは2002年のこと。当時21歳と15歳だったマルシャンとメェッフェルは、パリ南部の廃墟に無断で足を踏み入れ、その規模と歴史的な重みに引き込まれていった。2005年には「アメリカのポンペイ」とも呼ばれるデトロイトへ渡り、産業衰退が進む都市の現実を記録。2010年に出版した写真集『The Ruins of Detroit』は、現代の廃墟写真を代表する一冊として広く知られている。

「写真は長いあいだ、そこに存在した現実を映すものとされてきました。しかし生成AIの登場が、その前提を大きく揺るがしています」とふたりは語る。今回の新作《Les Ruines de Kyoto》(2025)では、生成AIを用いて京都を荒廃した風景へと変貌させた。1871年のパリ・コミューン後、当時の写真家たちは焼け跡の首都を記録した写真アルバム『Les Ruines de Paris』を残している。ふたりはその題名を受け継ぎ、パリと京都を「終末後」の景色として作り出した。



人間の存在もまた、いつかは朽ちていく。崩れゆく建物に惹きつけられるのは、そこに自分自身の儚さを見るからかもしれない。なぜ人は廃墟に魅力を感じるのか。ふたりの作品を前に、改めてその問いと向き合ってみてほしい。