最終更新:2018年7月31日

モネと現代アートの「つながり」を楽しむ!横浜美術館「モネ それからの100年」展

モチーフの引用、問題意識の共有……様々な観点から見出される、モネから現代に連なる系譜

横浜美術館で始まった「モネ それからの100年」展(2018年7月14日〜9月24日)。モネによる絵画25点と、後世代の26作家による絵画・版画・写真・映像66点を展示し、モネと現代アートとのつながりを提示する。モネの日本初公開作品が展示されるほか、湯浅克俊、水野勝規、福田美蘭の3作家による新作も含まれる。モネ作品と現代の作品を織り交ぜた構成で、「印象派はもう飽きた」と感じている人にこそ足を運んでほしい展覧会だ。
また、企画展と関連した展示が行われているコレクション展の様子もあわせて紹介する。

クロード・モネ《睡蓮》(1914-17年、群馬県立近代美術館 (群馬県企業局寄託作品) ) photo by Natsuki Morooka

「モネ それからの100年」展

新しい絵画へーー立ちあがる色彩と筆触

第1章には、モネの前期の作品とともに、色彩と筆触への強い意識を見出せる後世代の作家の作品が並ぶ。キャンバスではない支持体に乗せられた色彩が美しいルイ・カーヌの作品や、補色を効果的に使用して光に満ちたような画面が現れる中西夏之の作品などからは、モネの関心が現代の画家たちにも共有されていることを確認できる。

右の作品は金網に裏から絵具を乗せたもの。浮遊感が楽しい
左 ルイ・カーヌ《作品》(1995年、大原美術館)、右 ルイ・カーヌ《彩られた空気》(2008年、ギャラリーヤマキファインアート)

黄緑と紫は、モネがこよなく愛した補色でもある
中西夏之《G/Z 夏至・橋の上 3Z Ⅱ》(1992年、名古屋画廊)

「形なきもの」への眼差しーー光、大気、水

モネの生涯を通じての関心は、大気のゆらぎ、光線の移ろいといった自然の変幻の瞬間を写しとることだった。第2章には、大気、光、水といった不定形のモティーフを描くモネ作品とともに、揺らぎをもった色彩のグラデーションが印象的なゲルハルト・リヒターの作品などを展示する。

クロード・モネ《ジヴェルニーの草原》(1890年、福島県立美術館)

クロード・モネ《テムズ河のチャリング・クロス橋》(1903年、吉野石膏株式会社 (山形美術館に寄託) ) photo by Natsuki Morooka

左 ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング (CR845-5)》(1997年、金沢21世紀美術館)、右 ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング (CR845-8)》(1997年、金沢21世紀美術館) photo by Natsuki Morooka

水野勝規《reflection》(2012年、作家蔵)

モネへのオマージューーさまざまな「引用」のかたち

モネの作品は、数多くのアーティストたちによって引用されてきた。第3章では、モティーフの引用にとどまらず、構図、色と形の反復、同一のイメージの並列とヴァリエーションなど、作家の関心に基づいて様々になされてきた引用の様相を探る。

モネが連作のテーマとした積み藁を、版画による連作に。リキテンスタイン特有のベンデイ・ドット (網点) は、印象派の筆触分割を機械的なイメージに置き換えたものと見ることもできると指摘されている
ロイ・リキテンスタイン《積みわら #1、#2、#3、#4、#6、#6 (第1ステート)》(1969年、富士ゼロックス株式会社)

左 児玉麻緒《SUIREN》(2016年、作家蔵)、右 児玉麻緒《IKEMONET》(2015年、作家蔵)

フレームを越えてーー拡張するイメージと空間

最終章となる第4章では、モネ後期の作品に見られる反復の表現と重層的なイメージの交錯、イメージの空間への拡がりに焦点を当てる。印象派に通じる色面分割の手法が取られるジャン=ポール・リオペルの作品や、鑑賞者の動きによって見え方が変化する小野耕石の作品などから、モネと現代アートとの接点を探る。

モネによる作品(右)は日本初公開
左 ジャン=ポール・リオペル《絵画》(1955年、大原美術館)、右 クロード・モネ《バラの小道の家》(1925年、個人蔵 (ロンドン) )

福田の新作は、モネの睡蓮を現代の都市の中に見出すもの
左 福田美蘭《睡蓮の池》(2018年、作家蔵)、右 福田美蘭《睡蓮の池 朝》(2018年、作家蔵)

50回以上版を重ね色層が作られた画面は、見る角度によって全く異なる色と表情を見せる
小野耕石《波絵》(2017年、作家蔵) photo by Natsuki Morooka

展覧会グッズには鍵善良房によるモネの庭をイメージした干菓子「うつろひ」も (毎週金曜日60個入荷)
美術館前には小さな睡蓮の鉢も出現。午前から昼ごろまでの数時間、花が開くのを見ることができる

横浜美術館コレクション展

現在開催中の「モネ それからの100年」展と、10月から始まる企画展「駒井哲郎ー煌めく紙上の宇宙」展(2018年10月13日〜12月16日)とに関連したコレクション展も開催されている。コレクション展の会期は2018年12月16日まで。

コレクション展の最初のパート「明治150年、開国の風景ーーモネと同時代の日本の美術」では、チャールズ・ワーグマン、高橋由一、五姓田義松などによって明治初期に描かれた油絵や、小林清親による東京の風景を写した版画、宮川香山による真葛焼などを展示。開国前後の日本人と外国人の視点の違い、描かれるものの現れ方の違いに注目してみては。

小林清親《海運橋 (第一銀行雪中)》(1876年ごろ、横浜美術館)

モネら印象派の画家が創始した筆触分割は、画面上に材質感を残すという点でも革新的だった。ふたつ目のパート「筆触、ブラッシュ・ストロークをめぐって」では、筆触、つまり絵具をどのように画面上に置いて絵肌を作り出すかへの関心のもとに制作された作品を展示。白髪一雄や中村一美など戦後の作家による作品を中心に紹介する。

中村一美《連差ー破房Ⅶ》(1995年) photo by Natsuki Morooka

モネは後の時代の作家たちに参照され引用されてきたが、このような営みは美術の様々な作品に見出すことができる。3つ目のパート「イメージの引用と転化」では、森村泰昌や福田美蘭、荒木経惟らによる、古典作品や周知のイメージを自作に取り入れ新たな表現を生み出した作品を取り上げる。

古典的な宗教画のフォーマットを使いながら、登場人物を作家自身や人形のイメージに置き換える
森村泰昌《神とのたわむれ》シリーズ (1991年) photo by Natsuki Morooka

荒木経惟〈複写美人〉シリーズ (2008年)

4つ目のパート「幻想へのいざない 駒井哲郎展をきっかけに」では、幻想性を強く感じさせる作品や、画家によって現実の風景が再構成された作品が展示される。また、写真展示室では「モネと同時代のフランス写真ー都市の風景など」と題して、ウジェーヌ・アジェ、ロベール・ドマシーら19世紀から20世紀前半の写真家たちが切り取ったフランスの風景・人物写真が展示される。

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※撮影クレジットがないものに関してはすべて筆者が撮影
edited by Natsuki Morooka

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Mirai Kaneko

Mirai Kaneko

岐阜県出身。日本美術史を学ぶ大学生。最近は中世の美術が気になる。大きな駅が好きで、お気に入りは新大阪駅。

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