公開日:2023年11月15日

初公開の新作約160点で望む。「村上隆 もののけ 京都」に向けた村上隆の作意は?

「村上隆 もののけ 京都」の記者会見が、11月14日に京都・祇園甲部歌舞練場で開催された。京都市京セラ美術館で2024年2月から開催される個展となる。村上隆本人が登壇し、展示内容の詳細が明らかになった。

11月14日、「村上隆 もののけ 京都」記者発表会にて

日本を代表する現代アーティストである村上隆の大規模な個展「村上隆 もののけ 京都」に注目が集まっている。国内で約8年ぶり、東京以外で初めてとなる大規模個展は、2024年2月3日〜9月1日京都市京セラ美術館で開催される。

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記者会見には、京都市京セラ美術館 事業企画推進室 高橋信也と村上隆が登壇。対談形式で進行された。記者会見の冒頭には、芸姑連による「手打ち」が披露された。これは顔見世興行において、贔屓の人に揃いの衣装で手を打ったり芸を披露したところから始まったもので、祝いの席に披露されるもの。村上本人のたっての願いによって今回実現した。

左から、京都市京セラ美術館 事業企画推進室 高橋信也と村上隆
記者会見で披露された、芸姑連による「手打ち」

「日本芸術の真髄を考えた時に、この手打ちは空間やその奥行きも含めていまの美の究極のあり方だと感じている。私が提唱する現代美術の芸術運動および概念であるスーパーフラットの概念そのもの。私自身やカイカイキキは、手打ちをパフォーマンスをしてくれた方々と同じで、日本の美を世界に届けるような気概を持って制作している」と村上は語った。

11月14日に京都・南座で村上隆による祝幕《2020 ⼗三代⽬市川團⼗郎⽩猿 襲名⼗⼋番》が披露された。左から三池崇史、十三代市川團十郎白猿、村上隆

京都市美術館会館90周年記念も兼ねている本展に対して、「日本でやる展覧会は最後になるかもしれない」と意気込みを見せる。約170作品のうち約160作品は、初公開の新作だ。制作については、京都市京セラ美術館の高橋信也が脚本家で、村上は監督であり演者だと例えた。「尾形光琳や曾我蕭白の雲龍図など、高橋さんの希望を受けてそれに答えるようなかたちで制作をしている。エスプリが効いた高橋さんのオーダーも楽しい。私も60歳を超えた。一つひとつの展覧会に対して、これが最後になるかもしれないという気持ちで真摯に取り組んでいる」。

⾦⾊の空の夏のお花畑 2023 Ⓒ2023 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
尾形光琳の花 2023 Ⓒ2023 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

岩佐又兵衛の傑作である「洛中洛外図屏風(舟木本)」(東博蔵)を引用した《洛中洛外図》も制作中だという。4000人の登場人物が作品に描かれる過程で、スタッフ同士間で初めて喧嘩が起こったというエピソードもあった。十三代市川團十郎白猿襲名披露興行のために制作された祝幕の原画も見ることができる。江戸時代の絵師にインスピレーションを受け、京都に深い関心を持っている村上。今回の展示では、日本美術から着想を得た多くの作品が誕生しそうだ。

琳派のお花と抽象的図像 2023 Ⓒ2023 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

作品制作への姿勢について、最後にこう締めくくった。
「制作するうえでは頭を空っぽにして欲を捨てて、自我そのものを漂白していく、透明にしていく努力が必要だ。たとえば風神雷神は最高のコンディションで、脱力して制作できたと思う。またその努力の結果が、他の作品でも様々に見つけられると思う。世界にいる少数の芸術のプロフェッショナルに豪速球で投げている感覚だ。自分が蓄積してきた芸術のなかで、いま最高のものを作っている」。

作品鑑賞もさることながら、特設ショップにも趣向が凝らされているという。今後の美術工芸のあり方を変えるようなインパクトのある商品が出揃うそうだ。こちらも期待したい。

京都市美術館開館90周年記念展「村上隆もののけ京都」

会期:2024年2月3日〜9月1日
開館時間:10:00〜18:00(最終入場は17:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
会場:京都市京セラ美術館新館東山キューブ
観覧料:一般 | 2,200円(2,000円)大学・専門学校生|1,500円(1,300円)高校生 |1,000円(800円)中学生以下無料
※()内は前売、20人以上の団体料金
※障害者手帳等をご提示の方は本人及び介護者1名無料(学生証、障害者手帳等確認できるものをご持参ください)
公式サイト:https://takashimurakami-kyoto.exhibit.jp
問い合わせ:075-771-4334(京都市京セラ美術館)
主催:京都市、朝日新聞社、京都新聞、NHK京都放送局、NHKエンタープライズ近畿
クリエイティブ・パートナー:ソニー・ミュージックエンタテインメント
制作協力:NHKプロモーション
企画:京都市京セラ美術館、三木あき子

小倉ちあき

小倉ちあき

ライター・編集。企業での広報部勤務を経て、独立。主に地域・アートの領域で執筆する。WEBメディアの運営も。プロジェクトや取材に合わせて、各地を巡る。テーマは居場所と移動。