公開日:2026年3月9日

『バービー』『ステップフォード・ワイフ』『キューティ・ブロンド』:ピンクと黒と「大人になる」ということ(文:横山紗亜耶)

ピンクはいつから、シリアスではない色になったのか。人類学者の横山紗亜耶が、全身ピンクの大人が登場する3本の映画とともに問い直す(構成:灰咲光那)

『バービー』 配給:ワーナー・ブラザース映画 © 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

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ピンクは女の子で、ブルーは男の子

色による男女の区別は、20世紀初頭にアメリカの百貨店のベビー用品売り場から始まった(*1)。ここからまずわかるのは、この区別ができたのがごく最近だということだろう。さらに、それが商業的な目的を持ってデザインされた区別であるということ。あるいは、百貨店でベビー用品を買い揃えるような階級のアメリカ人の慣習が前提にあるということ。そしてなにより、子供向けであるということだ。

大人の世界にも、二元的な男女の区別は溢れている。しかし、そのシンボルカラーは必ずしも「ピンク」と「ブルー」ではない。多くの場合、それは「ピンク」と「黒」だ。ピンクと黒は、女と男の区別にとどまらず、遊びと現実、家庭と仕事、そして、子供と大人を塗り分ける。ピンクと黒の区別は、大人の世界の秩序を明るみに出すのだ。

大人になったらピンクは「卒業」するものだと聞いたことのある人もいるだろう。全身ピンクは大人にふさわしくないのだろうか。そもそも、「大人になる」とはどういうことなのか。誰がそれを決めるのか。そんな問いを、全身ピンクの大人が登場する3つの映画を通して考えてみたい。

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