身の回りの物も故郷も。失くし物が多い人へ──植民地、女性、移民:イリナ・グリゴレが見た、リナ・バネルジー 「“You made me leave home...」(エスパス ルイ・ヴィトン東京)

南アジア系ディアスポラのアーティスト、リナ・バネルジーの個展がエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中。『優しい地獄』(亜紀書房)、『みえないもの』(柏書房)などの著書で知られる文化人類学者イリナ・グリゴレが本展を鑑賞し、エッセイを綴る

リナ・バネルジー 「“You made me leave home...」(エスパス ルイ・ヴィトン東京)会場にて筆者 撮影:編集部

綿糸やココナッツパウダー、髪の毛、ダチョウの卵など、植民地主義の文化的・物質的な残滓を反映した様々なファウンド・オブジェクトを、複雑で幻想的なインスタレーションや神秘的な女性像へと変容させるアーティスト、リナ・バネルジー。彼女の個展 「“You made me leave home...」が、東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で9月13日まで開催されている。

作家はインドに生まれ、イギリスでの生活を経て7歳の頃に家族とともにアメリカに移住した。社会の不均衡や分断を批判的なまなざしで見つめるその作品は、遊び心やユーモアに満ちている。

今回の展覧会では、19点の作品を通じて、地球規模で行われる人と物の移動、植民地主義のレガシーに光を当てる。このたび本展を訪れたのは、社会主義政権下のルーマニアに生まれ、現在は青森を拠点とする文化人類学者のイリナ・グリゴレだ。イメージ、自然観、死生観、有用植物、霊魂などをキーワードにリサーチを行う彼女は、自身もリナ・バネルジーも「失くし物」が多いのだという。イリナ・グリゴレが本展に寄せたエッセイをお届けする。【Tokyo Art Beat】

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大事にしていたものがどこかへ消えてしまったときに

リナ・バネルジーと東京で出会った。本人とではなく、本人が世界中から集めた様々な素材とだ。カウリーシェル=貝貨(タカラガイ)、羽、テキスタイル、植民地時代の物品、家庭用品、アリゲーターの頭部、パイレックス管などを組み合わせた、巨大でありながら繊細な彫刻やインスタレーションを目の前にして、私は一瞬、自分の中から出てしまった記憶のカケラなのではないかと思った。私とリナさん、名前も(イ)リナ、の「イ」だけが多い程度の違いだと思った。私もよく海でシーグラスや流された木を集めて何かを作りたいと思うけど、シーグラスや石、木を家に大事に運んでも家で失くしてしまう。それだけではなく、本とピアス、ペン、故郷まですぐ失くしてしまう人だから、リナさんの作品と出会って、私が失くしたものをすべて見つけた気がした。

リナ・バネルジー《In an unnatural storm a world fertile, fragile and desirous,polluted with excess pollination, hungry to seize an untidy commerce also gave an unknowable size to some mongrel possessions, excreted a promiscuous heritage, sprayed her modern love, breathed deeper than any one place arching her back threw new empire, religion, bathed in unseasonable hope to alter what could not be warm》(部分)(2008)  「“You made me leave home...」(エスパス ルイ・ヴィトン東京)会場風景より 撮影:筆者

物が人と同じように、移動する、動く。物が運ばれる、投げられる、壊れる、愛される、消える。大事にしていたものがどこかへ消えてしまったときに、リナさんのインスタレーションを見に行ってください。思い出す、見つかる、気づかせる力があるから。

リナ・バネルジー 「“You made me leave home...」(エスパス ルイ・ヴィトン東京)会場風景 Photo: Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
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