
会場風景 撮影:筆者
たった6コマのマンガと、古めかしい交通標識から始まる本展。展示室をつなぐ通路には、過剰なほどに順路が示されていて……? 金沢21世紀美術館(以下、21美)でスタートした展覧会「路上、お邪魔ですか?」(会期:4月25日〜9月6日)は、芸術の枠組みのなかでは語り尽くせない、他者と共有する場における公共性について考えるプラットフォームだ。
7つのセクション、15組2団体で構成された本展。出展者には、マンガ家のpanpanyaに今年96歳になる大道芸人のギリヤーク尼ヶ崎、地方自治体の高松市と、美術館の企画展出展者としては珍しい名前が並ぶ。それもそのはず、本展の中核を成すのは「路上観察学会」だ。赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、杉浦日向子らによって1986年に発足したその学会は、芸術や美術として表現されたものとは距離を置き、路上に意図せず生じている状況を観察によって見出し面白がることを軸とする。彼らの40周年を契機とする本展に、美術作家による作品ばかりが並ぶはずがない。
本展担当学芸員であり建築史家の本橋仁は、以前から学会員らと交流があり、2年前、中心人物のひとりから「2026年は40周年であり、赤瀬川の13回忌にもあたる。なにかできないか」と采を投げられたという。何かしないでいられるはずもなく、プロジェクト「路上観察よいつまでも」を始動。38周年、39周年とイベントを実施し、また路上観察学会オフィシャルクラブを立ち上げ気運を高めてきた。本展はその着地点のひとつと言える。
加えて本橋は「路上」における公共性に着目し、21美が抱える課題意識を掛け合わせた。多方向に開口部を持ち、屋外とフラットにつながる21美は「市民に開かれた美術館」をコンセプトとした公園のような美術館だ。2015年の北陸新幹線開通以降、美術館を訪れる人は爆発的に増え、客層の広がりは開かれた美術館のイメージを定着させた。いっぽうで、市民からは「足が遠のいている」という声も聞かれるようになり、「市民にとっての公共的な、憩いの場になれていないのでは」という懸念を抱いていたという。

かくして、「美術館の公共性」という課題意識と、「路上観察学会」の40周年という節目、そのふたつが重なり生まれたのが本展だ。したがって本展の「路上」が指すものは道に限らない。露地や公園、あるいは思考が行き来する観念的な空間まで、共有された土地(shared ground)のすべてを射程に、公共性を考える場として構築されている。