
チャーリー・クラーク 森美術館「ロン・ミュエク」展会場にて 撮影:灰咲光那(編集部)
*チケット割引情報🎫Tokyo Art Beatの有料会員機能「ミューぽん」を使うと本展のチケット料金が200円OFFに!(6月30日まで)会員ログイン後に展覧会ページからご利用いただけます。ミューぽんの詳細はこちら。
オーストラリア出身で、イギリスで活動を行う現代美術アーティスト、ロン・ミュエクの大規模個展が森美術館で開催されている。本展はカルティエ現代美術財団との共催で、日本での個展は18年ぶり。本展のアソシエイトキュレーターで、ミュエクとともに25年以上制作を行なってきたチャーリー・クラークにミュエクの創作と展覧会の見どころについて話を聞いた。
──日本の鑑賞者は、ミュエクの作品を十和田市現代美術館の常設作品《スタンディング・ウーマン》(2007)や、2006年に東京都現代美術館で開催された「カルティエ現代美術財団コレクション展」でも展示された《イン・ベッド》(2005)などで知った方が多いです。そのためか、ミュエクの作品 =「非常に大きなもの」というイメージを持たれる方が少なくありません。いっぽうで、本展では実際の人間よりもとても小さく作られた作品も展示されています。ミュエクはスケール(大きさ)をどのようにして決めていくのでしょうか?
ロンにとって、作品のスケールは、その作品の構想そのものに深く結びついていると思います。等身大より大きくすべきか小さくすべきかを、最初から知っているのです。ロンはまず、粘土や蝋で小さなマケット(模型)を作ることが多いです。そして、自由に手を動かしながら、キャラクターやポーズをかたちにしていきます。時には、スタジオの壁にドローイングを描き、鑑賞者との関係を意識しながらサイズ感を調整していくこともあります。
ロンの彫刻で、もっとも目を引くのはそのスケールかもしれませんが、私がより重要だと思うのは、そのスケールが鑑賞者にどのような体験をもたらすかということです。たとえば女性像の《イン・ベッド》は、ベッドで上半身を起こした女性を表した全長6.5mの彫刻です。彼女はどこか物思いにふけり、私たちには見えない何かに意識を向けているように見えます。ロンは日常の静かなひとときを巨大な大きさで提示することで、私たちの注意を引きつけます。そして、私たち自身にもどこか覚えのある、しかし見過ごしてしまいがちな「瞬間」について考えるよう誘うのです。

《ゴースト》(1998/2014)では、水着姿のティーンネイジャーの少女が壁にもたれかかり、長い脚でしっかりと地面を踏みしめ、拳を握りしめながら顔をそむけています。ここでも、等身大の人間よりも大きく表現することで、彼女が抱える脆さやぎこちなさ、不安といった感情を増幅させています。

いっぽう、《若いカップル》(2013)はどこか緊張感をはらみながらも、その関係性がはっきりとは見えてこない少年と少女が表現されています。ロンは彼らをあえて小さなサイズで表現することで、その脆さや繊細さを際立たせ、鑑賞者をふたりの世界へと引き込みます。そして、まるでふたりの密やかな会話に耳を傾けるように、思わず身を乗り出したくなる感覚を呼び起こしているのです。
