佐々木健(右)と福尾匠(左) 「合流点」(五味家、2022)会場にて 撮影:編集部
佐々木健「合流点」は、神奈川県鎌倉市にある民家で開催された展覧会だ。「五味家 (The Kamakura Project)」というこの民家には、かつて作家の祖父母が住んでいた。会期は2021年7月31日~10月31日だったが、反響を受けて何度か延長され、22年2月まで開かれることになった。
本展は神奈川県の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件が発端となっている。佐々木の兄も神奈川県内の障害者施設に入所していたことから、事件の報道を受けた作家は「兄が殺された可能性で目の前が真っ暗になった」(本展ステートメントより)という。この経験をもとに、佐々木は両親の協力を得、議論を重ねながら、民家と庭と絵画から成る本展を実現させた。
今回、『眼がスクリーンになるとき:ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』の著者である批評家・福尾匠を聞き手に迎え、佐々木健のロングインタビューをお届けする。福尾はまず11月に展覧会を訪れ、翌年1月に再訪し取材を行った。
公共性や社会的な問題と、作家自身の生に根ざした個別具体性とがわかち難く同居し、類まれな展示となった本展。インタビューでは福祉のあり方や、被害者の実名報道がなされづらいという現状、絵画の問題や「崇高」の概念、ケアとキュレーション、福尾がオンライン上で発表している「日記」、そして作家と家族の関係など、その話題は多岐にわたった。【Tokyo Art Beat】
