公開日:2026年2月12日

上原沙也加インタビュー。消えた風景に残る歴史の痕跡、沖縄と台湾を旅する写真

「あざみ野フォト・ アニュアル2026 上原沙也加 たとえすべての瓦礫が跡形もなくきれいに片付けられたとしても」展が、横浜市民ギャラリーあざみ野で2月22日まで開催中。注目の若手写真家・上原沙也加にインタビュー

「眠る木」より、《沖縄県 北谷町 美浜》

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4つのシリーズで辿る10年の軌跡

目まぐるしい都市の変化のなかで、建物が替わっていても、以前に何があったか思い出せないことがある。横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「あざみ野フォト・アニュアル2026 上原沙也加 たとえすべての瓦礫が跡形もなくきれいに片付けられたとしても」(1月24日〜2月22日)は、そんな見えない風景の読み解き方をさりげなく教えてくれる。

横浜市民ギャラリーあざみ野では、毎年、横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展と写真表現の現在を切り取る企画展の2本立てからなる「あざみ野フォト・アニュアル」シリーズを開催している。今回の企画展に選ばれたのは、1993年沖縄県生まれの上原沙也加「VOCA展2024 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」でVOCA奨励賞、大原美術館賞を受賞するなど、近年評価の高い気鋭の写真家だ。上原へのインタビューを交えて展覧会をレポートする。

上原沙也加

東京造形大学で写真を専攻した上原は、卒業制作で沖縄を撮影するようになり、2016年卒業後、改めて沖縄で制作に取り組み始めた。沖縄の外に出てみたくて東京に進学したが、東京で出会う商品化・定型化した沖縄のイメージに違和感を感じ、自身の生活と地続きにある風景とそこに残る歴史の痕跡を写真に残し、見つめ直したいと考えるようになったという。

今回の個展では、約10年にわたり発表してきた4つのシリーズを初めてまとめて展示している。会場を左右に分け、左側には沖縄島(通称:沖縄本島)を写し、写真集にもなっている「眠る木」と、慶良間諸島を旅した「前の浜」、右側には台湾で撮影した「緑の部屋」と「緑の日々」を配置した。カラーからモノクロームへ、光と影を感じながら再びカラーに帰るという構成で、それぞれの場所と時間を旅するように鑑賞できる。

「眠る木」より、左から《沖縄県 宜野湾市 大山》、《沖縄県那覇市 松尾》

上原は、その土地や歴史に接していくアプローチとして、「写真を撮る」「後から見返す」「持ち帰ったものを再び手に取る」というプロセスを行き来する。「風景がどんなに塗り替わったとしても、声を発さなくても、そこで起こったことは消えない。取るに足らないような細部のものにも、小さな“証言”が残されている」という彼女は、街を歩きながら耳を澄ませるように目に止まったものをひたすら写し、その後再びゆっくり時間をかけて読み込み、写り込んだものを調べたりしながら写真を選び直すという作業を繰り返す。さらに台湾のように生活圏から離れた場所では、お土産品などを持ち帰り、自身の空間としての部屋や、身体の一部である手の中に置き、その手ざわりのようなものを撮影するようになった。

「ひとときの旅であったとしても、それぞれの場所のことを考え続けていると、日常の風景のなかにも複数の歴史が接続していて、実際に自分の生活の深いところでつながっているように感じられました。そうした持続する時間をも作品に内包し、可視化したいと思いました」(上原)

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