藤森照信館長×米山勇研究員(東京都江戸東京博物館)が語る、明治の洋館の「妖しい」魅力。見よう見まねで始まった建築家や技術者たちの挑戦

東京都江戸東京博物館で8月23日まで、「江戸東京博物館リニューアル記念特別展 洋館 明治の夢と挑戦」が開催中。館長である建築史家・建築家の藤森照信と、同館研究員であり、明治時代を舞台にしたNHK連続テレビ小説『風、薫る』の建築考証も手がける米山勇が展覧会を語る

左から、米山勇、藤森照信

西洋化の波が突然押し寄せた明治初期、日本の大工たちは初めて目にした西洋建築を参考に、新たな擬洋風建築を作り始めた。外国人建築家の来日と初めて誕生した日本人建築家の挑戦、そして庶民が憧れた大邸宅が、都市の風景を変えていく。「洋館 明治の夢と挑戦」は、洋館と都市、建築家たちの奮闘を、数多くの資料と再現展示を通して体感できる内容だ。

今回は、今年3月にリニューアルオープンした東京都江戸東京博物館のリニューアル記念特別展の第2弾として企画された本展について、同館館長である建築史家・建築家の藤森照信と本展の企画を手がけた米山勇研究員にインタビュー。明治という時代や展覧会の見どころ、さらには建築の楽しみ方から建築の保存に関する考えまで、ざっくばらんに話を聞いた。

*本展の展覧会レポートはこちら

“神話の時代”の建築は面白い。過渡期の都市が放つエネルギー

──そもそもなぜ、リニューアル記念展として、明治時代の洋館をテーマにした特別展を開催するのでしょうか?

藤森 常設展に服部時計店(明治期の銀座を象徴する建物)を再建しようという話が何年も前からあったのですが、今春のリニューアルでついに実現しました。この機会に、建築展、なかでも明治期以降の洋館にフォーカスした日本の近代建築の展示を、建築史家でもある米山研究員と一緒にやりたい、と。

江戸から明治に時代が変わったとき、政府による突然の方針転換で、建物も西洋化が進められることになりますが、当時、日本に輸入された絵画にはヨーロッパの建築が描かれていたものの、多くの人は実際のヨーロッパの建築を見たことがないから、その実態はわからないままだった。とくに幕末から明治初期、イギリスの建築家ジョサイア・コンドルが来日し、日本人建築家を育成していくまでの約20年は混乱状態だったんです。加えて、コンドルが教えたことはきちんと記録に残っているし、建築雑誌などのジャーナリズムも生まれたけれど、それ以前の記録はあまり残っていない。そんな曖昧で、ある意味 “神話の時代”とも言える時期の建築は面白いのです。

米山 なんでもそうですが、知らないが故にできることってありますよね。恐れを知らない、とも言えますが、明治初期の建築には、一種の「妖しい」魅力があったと思います。大正から昭和にかけて、日本各地で立派な建築物が作られますが、本展ではそれ以前のどこか妖しいエネルギーを持った建築についても積極的に紹介しています。

「洋館 明治の夢と挑戦」会場風景

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