
会場にて、メル・チン
広島市現代美術館では、「第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展」が開催されている。会期は7月25日から10月12日まで。
「ヒロシマ賞」は、世界の恒久平和と人類の繁栄を願う「ヒロシマの心」を美術を通して世界へ発信するため1989年に創設され、3年に一度授与される。これまで三宅一生、蔡國強、オノ・ヨーコ、アルフレド・ジャーといった世界的な作家に贈られてきた。第12回の受賞者に選ばれたのは、環境問題をはじめとする複雑な社会的課題を、既存のジャンルに収まらない独自の方法で扱い続けてきた中国系アメリカ人アーティスト、メル・チンだ。

メル・チンは1951年テキサス州ヒューストン生まれ。彫刻からドローイング、絵画、ヴィデオ、ビデオゲーム、大規模な公共インスタレーションまで、表現はメディアの垣根を軽々と越えてきた。地域住民との協働や科学的な手法を取り入れた長期プロジェクトを重ね、アートが社会的な意識と責任をいかに喚起しうるかを問い続けてきた作家である。「光州ビエンナーレ」(1997)や「リヨン・ビエンナーレ」(2001)への参加を経て、2014年にはニューオリンズ美術館、2018年にはニューヨークのクイーンズ美術館でそれぞれ大規模な回顧展が開かれた。日本での個展は今回が初めてとなる。

半世紀近くにおよぶキャリアの代表作をたどりながら、ヒロシマ賞のために制作された新作も加えた本展は、2階にわたる2章構成。第1章「奇妙な花の下で」は2002年から2006年にかけての代表作を、第2章「逃れられない歴史」は初期作から最新作までを紹介する。暴力の記憶をどう見つめ直すか。チンが半世紀近く取り組んできた問いが、会場全体を貫いている。
