公開日:2026年7月16日

「ぬけみち展 かわす・つくる・ともにいる―生きるための回路」(アーツ前橋)レポート。7組の作家が示す、現実のなかの小さな道

阿部航太、高野ユリカ、SIDE CORE、坂本舞ニルセン、鈴木哲生、ドットアーキテクツ、三野新&山本卓卓ら参加。会期は7月4日〜8月30日

SIDE CORE rode work ver. under city 2023

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「ぬけみち展」で見つける、日常のなかの小さな抜け道

群馬のアーツ前橋「ぬけみち展 かわす・つくる・ともにいる―生きるための回路」が開催されている。会期は8月30日まで。

本展では、建築・ファッション・デザイン・演劇・ストリートカルチャー・現代アートの領域で活動する7組の作家の視点や実践を紹介し、それぞれの方法から生まれる「ぬけみち」を探る。参加作家には阿部航太、高野ユリカ、SIDE CORE、坂本舞ニルセン、鈴木哲生、ドットアーキテクツ、三野新山本卓卓が名を連ねる。

参加作家、アーツ前橋学芸員の高橋由佳(前列右から2番目)、同館長の出原均(後列右端)

「ぬけみち」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶのはどんな道だろうか。本道をはずれた裏道、現実から離れた場所へ向かう道か。あるいは、現実そのもののなかに見出される、また別の道か。アーツ前橋の館長を務める出原均がまず、この問いに答えるようにコメントした。

「今回参加していただいているのは、現実と結びついた作家の方々です。ただ、現実そのものも、ある種のぬけみちであるはずです。アジールやアサイラムのような、権力から守られた自由な場所こそがそれではないかと。そうした場所があるからこそ、現実から少し離れて、様々な考え方を提示できる。今回はむしろその力を借りて、現実の中にぬけみちを作っていく、という考え方なのだと思います」

続けて、本展のキュレーターを務める高橋由佳が企画の背景を語った。

「社会や芸術が、閉塞感や不安感、合理性、競争といったものにどんどん絡めとられていく。そこから抜け出し、また別の道を作っていくような実践を、今回は『ぬけみち』ととらえ、7組の作家の方たちに参加していただきました。現実を読み替える視点、規範やルールをかわす態度、そして現実を作り替えていくアクション――ぬけみちは、この3つの実践として立ち上がってくるものだと、展覧会を作りながら見えてきました」

三野新&山本卓卓 《あなたは必ず幸せになる》、《わたしは幸せになった》 2026

こうした言葉に導かれながら会場へ足を踏み入れると、入口で「あなたは必ず幸せになる」という、広告のようなネオンサインが来場者を出迎える。その奥には、工事現場を思わせる不思議な建造物が見える。本作は、劇作家・演出家の山本卓卓が「健康と幸せ」をテーマに書き下ろしたふたつの戯曲を、アーティストの三野新が演出した作品だ。ふたりが見つめるのは、本来それぞれの身体や時間で確かめられるはずの「幸せ」が、いつしか他者や社会との比較によって測られる尺度になっているということだ。

三野新&山本卓卓 《あなたは必ず幸せになる》、《わたしは幸せになった》 2026

ここで展開されている物語に明確な順序はない。各所から発せられる声やモノの記述を読み解きながら、鑑賞者は空間を進んでいく。1階と地下を回遊する構成で戯曲は空間化され、75cmの段差を境に「上の世界」と「下の世界」に分かれる。鑑賞者は俳優の声に導かれながら、上にいる者、下にいる者、そして自身の身体という3つの視点を行き来していく構成となっている。なお、足場を登れない鑑賞者に向けては、同じ物語を別のかたちで体験できる「第三の物語」も用意されている。

左から三野新、山本卓卓
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