公開日:2026年9月5日

【フェルメール展】《真珠の耳飾りの少女》はなぜ人を惹きつける? 日本側監修者に聞く、作品の魅力、日本での受容、美術鑑賞の課題

《真珠の耳飾りの少女》が14年ぶりに来日した「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」が、大阪中之島美術館で9月27日まで開催中。本展の日本側監修を務める、西洋美術史が専門の美術史家・宮下規久朗 神戸大学大学院教授にインタビュー

「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」(大阪中之島美術館)会場風景

大阪中之島美術館で9月27日まで開催中の「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」。ヨハネス・フェルメールの代表作《真珠の耳飾りの少女》が14年ぶりに来日した本展は、事前チケットの争奪戦や会場の混雑状況がSNS上で議論を呼ぶなど、異例の熱気に包まれている。

前回の来日時(2012年「マウリッツハイス美術館展」)も東京と神戸で約120万人を動員するなど、圧倒的な人気を誇るフェルメール作品。なぜこれほどまでに人を引きつけるのか。「この展覧会はフェルメールだけではない」と語るのは、本展の日本側監修者である、西洋美術史が専門の美術史家・宮下規久朗 神戸大学大学院教授だ。作品が持つ特別な魅力から日本における受容史、鑑賞のポイント、そしてブロックバスター展が抱えるジレンマまで話を聞いた。

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初来日時は話題にならなかった? 日本における《真珠の耳飾りの少女》の受容

──展覧会が開幕してから大変な混雑状況が議論を呼んでいますが、どのようにご覧になっていますか。

この混雑ぶりはちょっと異常ですよね。2000年の「フェルメールとその時代」(大阪市立美術館)展も60万人という入場者数を記録して、「フェルメールブーム」のきっかけにもなりました。そのときからいままで「フェルメール」と名のつく展覧会は数回あったのですが、ここまでの盛り上がりではなかったと思います。やはり今回は、《真珠の耳飾りの少女》の一点豪華主義的な構成であることが大きいのではないでしょうか。

主催者側の話では、万博効果もあるそうです。万博では1、2時間並ぶのが当たり前で、並ぶことが苦ではなくなっているんですよね。万博でオランダ館はすごく人気がありました。そのような一種の万博ロスというか、万博の余波が続いているような感じもします。

大阪中之島美術館「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」会場風景より、ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》(1665頃、マウリッツハイス美術館)

──フェルメールや《真珠の耳飾りの少女》はどのようにしてここまで人気になったのか、日本での受容の変遷を教えてください。

フェルメールはフランスの美術評論家テオフィル・トレ=ビュルガーが19世紀に再評価するまで、死後200年間忘れられていた画家なんです。世界の大きな美術館も、その再発見の後から作品を買っています。日本では1970年代頃から画集もいくつか出ていましたが、知る人ぞ知る存在でした。

《真珠の耳飾りの少女》は、1984年に東京、愛知、北海道(国立西洋美術館愛知県美術館北海道立近代美術館)で行われた「マウリッツハイス王立美術館展」で初めて日本で展示されました。そのときの作品名は「青いターバンの少女」でした。当時は作品もフェルメールの名前自体もあまり知られていなかったので、ほとんど話題になりませんでした。私も会場で独り占めして見た記憶があります。

1999年にトレイシー・シュヴァリエの小説『真珠の耳飾りの少女』が出て、2003年にそれを原作にしたピーター・ウェーバー監督同名映画が封切られヒットしたことで、世界的にこの絵のブームが起きました。

映画『真珠の耳飾りの少女』は期間限定でギャガのYouTubeにて吹き替え版が公開されている

もともと1995〜96年にワシントンのナショナル・ギャラリーでフェルメール展があったんです。可能な限りフェルメール作品を集めた展覧会で、真冬にも関わらず長蛇の列ができ、フェルメールブームの火付け役となりました。これが日本にも波及したのが、2000年の「フェルメールとその時代」展です。このときは《真珠の耳飾りの少女》は、「青いターバンの少女(真珠の耳飾りの少女)」という作品名でした。これ以降、日本でもブームが起きて、フェルメールの展覧会がものすごい人数を集めるようになり、2012年の「マウリッツハイス美術館展」(東京都美術館神戸市立博物館)で《真珠の耳飾りの少女》が来たときにはさらなる話題になったというわけです。

《真珠の耳飾りの少女》は1984年、2000年、2012年に続いて今回は4回目の来日ですが、来るたびにどんどん人気が肥大化しているように感じます。フェルメールの作品は世界に30数点しかなく、作品は世界の代表的な美術館を網羅しているので、「フェルメール巡礼」のようなかたちで作品をコンプリートして見るという人もいます。300点もあれば回りきれないし、10点だけだったらすぐ見終わってしまうので、30数点というのもちょうど良い数なんですよね。

大阪中之島美術館「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」会場風景
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