今年のアート作品20選、25歳の日本人画家に脚光、一番検索されたアーティストは誰?:週刊・世界のアートニュース

ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目ニュースをピックアップ

In Art Beat News by Kosuke Fujitaka 2020-12-14

いま、世界のアート界では何が起こっているのか? ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目のニュースをピックアップ。今回は、12月5日〜11日のあいだに世界のアート系メディアで紹介されたニュースを「2020年の振り返り」「できごと」「アート・バーゼルがキャンセルされたマイアミ」「おすすめの長文記事」の4項目で紹介する。

2020年の振り返り

◎アートシーンをプレイバック
まだまだ12月前半だが、クリスマスがいわば年末のような感覚のアメリカでは、どの媒体でも今年を振り返る記事が出揃った。こちらはニューヨーク・タイムズによるアートシーンを振り返る記事。コロナ、オンライン化、BLM、美術館のコレクション売却、旧植民地への返却、そしてガストン。NYではジャッドとリヒターの回顧展などなど。
https://www.nytimes.com/2020/12/04/arts/important-art-moments-2020.html?referringSource=articleShare

◎今年のアート作品20選
ARTnewsが選ぶ今年のアート作品20選。有名作家の作品から、今年BLM、コロナ禍で大きくフィーチャーされた作品までいろいろ。今年になっていきなり有名になった作家の作品も結構ふくまれている。
https://www.artnews.com/list/art-news/artists/most-important-artworks-2020-1234578712/

◎今年のできごと20選
あわせてARTnewsが選んだアートのできごと20選。やはりコロナやBLMに触発されたできごとが多く、これまでの多数派の価値観が揺れ動いた一年だった。
https://www.artnews.com/art-news/news/most-important-art-events-2020-1234577832/

◎一番検索されたアーティストは誰?
Spotifyの今年のまとめ的にゲッティイメージズがアートにまつわるまとめを発表。一番検索された作家はゴッホで、その中でも一番見られたのは晩年に保護施設に入院中に描かれた《アイリス》だという。一般的にはもっと有名な《ひまわり》ではないのは今年の世相を反映しているのだろう。他はモネ、マネ、レンブラント、ドガなど。
https://hyperallergic.com/606014/the-most-popular-art-on-the-getty-website-in-2020/

できごと

◎時代の価値判断は偉業をも揺るがす
建築家のフィリップ・ジョンソンが白人至上主義、ファシズムに傾倒していたことは有名であったようで、記録にも残っているという。彼の名前を冠する部屋や建物があるMoMAとハーバードに彼の名前を外すよう建築家や作家などから署名が出されていたが、ハーバードの学部長は同大学内の「フィリップ・ジョンソン卒論ハウス(Philip Johnson’s Thesis House)」から彼の名前を外すことを決定。いまのところMoMAは未返答。
これは本当に難しい問題で個人的には複雑な心境。ただ作品が壊されたり、業績そのものが否定されているわけではなく、あくまで公共空間での名称を外す決定。パブリックスペースで名前が讃えられるというのはプロとしての業績以上に、現在その空間を使う人々の多様な価値判断に耐える必要があるということか。彼の作品である「グラスハウス」も「リンカーン・センター」も「シーグラム・ビルディング」も素晴らしい。今とは時代が違うのだからとも思う。ヒーローの認識に負の補正を入れるのは気持ちのよいものではない。が、やはり負の側面にも目を向ける必要があるし、自分のこれまでの認識をアップデートし変化させていかないといけないと感じさせる出来事で、今年は特にそういうことが多かった。
https://hyperallergic.com/605974/after-architects-denounce-philip-johnsons-white-supremacist-views-harvard-will-rename-a-house-he-designed/

◎25歳の日本人画家に脚光
25歳の日本人作家の鵜飼結一朗の絵画がNYのアメリカフォークアート美術館にコレクションされた。障害を持つ作家が集まる滋賀のやまなみ工房で制作する鵜飼はここ数年NYのアウトサイダーアートフェアに出品。そこで注目を浴び人気作家に。美術館の今年1年分の予算を使って購入されたとのこと。
https://www.theartnewspaper.com/news/yuichiro-ukai-s-manga-monster-drawing-acquired-by-american-folk-art-museum

◎Red Bull Artsが閉館へ
飲料メーカーのRed Bullが運営していたNYのアートスペースRed Bull Artsが6年の活動の末、閉館。ラメルジーの大規模個展などいくつもの面白いストリートアートの展覧会を開催。個人的に記憶に残っているのが、ラメルジーの個展で初期のいい2作品がともに世界有数のディーラーであるガゴシアンとジェフリー・ダイチのコレクションになっており、とても感心したこと。
https://www.artnews.com/art-news/news/red-bull-arts-new-york-closure-1234578239/

◎ソウルの美術館も再閉館へ
香港が第四波で美術館が閉館になったのに続いて、比較的うまく抑えこんでいた韓国でもコロナ陽性者数が増えており、ソウルの美術館が再閉館に。当面は12月18日まで閉館。
https://www.artnews.com/art-news/news/seoul-art-museums-close-covid-1234578514/

◎ルイーズ・ブルジョワの活動を振り返る
ルイーズ・ブルジョワの長いキャリアをマーケットから見た記事。45年に初めてNYのギャラリーで個展をしたが80年代まではあまり売れていなかった。82年にMoMAで回顧展があり売れ始め、それにつれて制作費がかかる大きな作品もつくることができるようになり、90年代半ばの巨大スパイダーがマーケット的には決定打になったと。キャリア当初は抽象表現主義ではないし、シュルレアリストでもないポップアーティストでもないと時代にフィットしなかったが、絵画、プリント、ソフトスカルプチャーからブロンズと幅広いメディアを駆使して作品群を独自に積み上げていったことで、今では「彼女独自の宇宙」として認識されるようになったという分析。
https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-louise-bourgeoiss-multifaceted-art-practice-won-collectors

◎イスタンブール・ビエンナーレのキュレーター発表へ
来年2021年の9月11日から11月14日に開催予定のイスタンブール・ビエンナーレのキュレーターが発表された。これまで1人のキュレーターが多かったが今回はキュレーターのウテ・メタ・バウアー、アーティストのアマル・カンワル、美術史家のデイビッド・テの3人が選出された。
https://www.artnews.com/art-news/news/istanbul-biennial-2021-curators-1234578860/

◎「スラヴ叙事詩」はふたたび遺族のもとへ
2017年に国立新美術館に巡回したミュシャの連作「スラヴ叙事詩」はプラハ市の所有だったが、1928年に市が専用の展示館を建設することが条件で遺族から市に寄贈されたのにいまだに未建設だとして孫が市を相手取って訴訟に。孫が勝訴し、連作をミュシャ財団に返却するよう求める判決が出た。東京巡回の際に巨大でもろい作品を運ぶことが作品保存上リスクだと大きな批判がでたことが訴訟のきっかけになったとのこと。
https://www.artnews.com/art-news/news/alphonse-mucha-slav-epic-prague-ownership-lawsuit-1234578760/

◎メキシコ文化施設の危機
メキシコの文化施設が「過酷な緊縮財政下」にあるとして、国際美術館会議(会長は片岡真実氏)から政府に改善の要請。現ロペスオブラドール大統領就任後、既存の美術館の運営費は昨年5月に大幅な文化予算カットが行われ、その予算を新しい美術館建設を含むメキシコ市のチャプルテペック公園の再開発に振り替えられたという。また美術館労働者の多くが非正規の雇用で不当な労働環境を強いられており、文化施設の未来が危ういと警告。
https://hyperallergic.com/606766/mexico-is-under-international-pressure-to-reform-its-cultural-institutions/

アート・バーゼルがキャンセルされたマイアミ

◎コロナ禍でのマイアミアートウィーク
アートバーゼルマイアミはキャンセルされたが、地元のギャラリー、コレクター、美術館と一部NYからのアートピープルで、いつもよりはローキーながらもアートウィークが行われているマイアミの様子のレポート。
https://news.artnet.com/market/art-basel-miami-beach-2020-2-1928814

◎パーティは中止
予想されてたことではあるが、マイアミのアートウィーク中のホテルでの大規模パーティーがコロナ禍での制限違反により警察が駆けつけて解散させる事態に。
https://pagesix.com/2020/12/07/cops-raid-art-basel-party-at-miamis-trendy-nautilus-hotel/

◎アメリカの新たなアート拠点
マイアミはフェアがキャンセルになってさえないが、車で北に1時間半のところにあり富裕層の邸宅が建ち並ぶパームビーチにはPace、Acquavella、Paula Cooper、Lehmann MaupinなどNYの大手ギャラリーの支店ができ、もうすぐWhite CubeとLévy Gorvyもオープンする予定。コロナを避けてNYからヘッジファンドなどが引っ越してきており、アートがどんどん売れているとのこと。
https://news.artnet.com/art-world/on-the-scene-in-palm-beach-1929229

おすすめの長文記事

◎ブリューゲルの名作をめぐって
西洋美術史の教科書で、中心が神から人間にうつったルネサンス後期を代表する作品として、とりわけ大きく扱われる16世紀ブラバント公国(現・オランダ)の画家ブリューゲルによる《雪中の狩人》。飢饉がおそったヨーロッパの冬の風景を逆に穏やかに美しく描いた風景画。この絵を下敷きにした詩や、タルコフスキー、フォン・トリアー、そしてキアロスタミによる映画的引用を紹介する長文記事。
https://www.artnews.com/art-in-america/features/pieter-bruegel-as-cinema-1234577739/

Kosuke Fujitaka

Kosuke Fujitaka. 1978年大阪生まれ。東京大学経済学部卒業。2004年、Tokyo Art Beatを共同設立。08年より拠点をニューヨークに移し、NY Art Beatを設立。アートに関する執筆、コーディネート、アドバイスなども行っている。 ≫ 他の記事

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