アフターコロナに入りつつある米英、アートでインドを支援、大富豪の離婚で作品は競売に?など:週刊・世界のアートニュース

ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目ニュースをピックアップ

In Art Beat News Main Article 3 by Kosuke Fujitaka 2021-05-11

いま、世界のアート界では何が起こっているのか? ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目のニュースをピックアップ。今回は、5月1日〜7日のあいだに世界のアート系メディアで紹介されたニュースを「インドやトルコで拡大するコロナ」「アフターコロナに入りつつある米英」「できごと」「アート関連建築ニュース」「おすすめの読み物と展覧会」の5項目で紹介する。

インドやトルコで拡大するコロナ

◎アートでインドを支援
コロナが猛威を振るうインドで逼迫する医療機関に少しでも寄与しようと、ロンドンベースの作家達がArt for Indiaプロジェクトを立ち上げて、写真を約1万5000円で販売。インドでは重症患者へ酸素吸入するための酸素が足りなくなっていることから、売り上げは全額が酸素濃縮器を緊急輸入する起業家達によるプロジェクトに寄付される。販売は5月9日まで。
https://news.artnet.com/art-world/art-for-india-fundraiser-1964612

◎イスタンブール・ビエンナーレは来年開催
トルコでも4月からコロナ陽性者が増加してロックダウン中だが、今年の9月に予定されていたイスタンブール・ビエンナーレが来年の9月に延期されることが決まった。
https://www.artnews.com/art-news/news/istanbul-biennial-2021-edition-postponed-covid-1234592052/

アフターコロナに入りつつある米英

◎久しぶりのアートフェア
5月5日からはじまった実際の会場でのアートフェアFrieze NY。主なアートフェアとしては世界でも久しぶりだが、NYでは昨年3月のアーモリーショー以来の大規模アートイベント。ワクチン接種かコロナ陰性証明が入場に際して求められる。コレクターはまだまだ海外からは少ないがダラスやマイアミなどアメリカ中からつめかけた。 フェア自体は例年の半分以下の規模だが、売れ行きは好調とのこと。
https://news.artnet.com/market/frieze-new-york-first-major-art-far-in-14-months-1965156

◎ロンドンを離れるアーティストたち
コロナの影響でロンドンからもアーティストが相当出ていったようで、その移住先としてスコットランドのDundeeや、イギリス南海岸のいくつかの街など小規模だが文化を推進して人を呼び込もうとしている街が挙げられている。さらにBrexitの影響でベルリンなど欧州の他の大都市へ移住した作家も多い。イギリスではロックダウンが解除されつつあり、移住していった作家たちは帰ってくるのだろうか?
https://news.artnet.com/art-world/as-the-u-k-inches-towards-reopening-will-the-creatives-who-fled-london-during-lockdown-return-to-the-capital-1964543

◎ブロードウェイの再開は?
NY市長は7月1日にもNYを完全再開させると宣言したが、ブロードウェイは9月半ばからの再開になりそう。再開準備に時間がかかるうえに、まだまだ観光客が戻っていないこと、そもそも劇場に人が集まることへの心理的抵抗が当分はとけないだろうことなどから、再開に慎重になっていると。チケットの販売は開始された。
https://www.nytimes.com/2021/05/05/theater/broadway-reopening-new-york.html

できごと

◎大コレクターを偲ぶ
大コレクターでロサンゼルスに自身のコレクションを展示する美術館The Broadを擁するエリ・ブロードが4月30日に亡くなった。彼とゆかりのあった、ジェフ・クーンズ、マーク・ブラッドフォード、シリン・ネシャット、バーバラ・クルーガーなどの作家やキュレーターなどから彼を偲ぶ言葉を集めた記事。
https://www.latimes.com/entertainment-arts/story/2021-04-30/eli-broad-death-artists-reaction

◎作家がタレントエージェンシーと契約
去年ガゴシアンで初個展を開催したタイタス・カファー(Titus Kaphar)は、現在それら絵画から派生した映画の制作をすすめているところで、それにあわせてロサンゼルスのタレントエージェンシーとも契約を交わしたという。作家がこのようにアートを通じてだけでなくもっと広く一般にリーチしようとする動きが広がっている。
https://www.artnews.com/art-news/news/titus-kaphar-united-talent-agency-deadline-1234591457/

◎大富豪の離婚後、作品は競売に?
ビルとメリンダ・ゲイツの離婚が大きく報じられたが、ビル・ゲイツは90年代の終わりにウィンスロー・ホーマー(Winslow Homer)やジョージ・ベローズ(George Bellow)などの19世紀アメリカを代表する作家の作品を購入していたそう。離婚に際してそれらが売りに出るのだろうかという憶測記事。14兆円を超えるといわれる資産内では、それら高額の作品とはいえ100億円あまりでは比率が小さすぎて売りに出る可能性は低いのでは。
https://www.artfixdaily.com/news_feed/2021/05/03/2113-bill-and-melinda-gates-are-splitting-up-now-what-about-their-art-

◎石像の意外な正体
キム・カーダシアンがベルギーのディーラーから買った石像の一部が、2016年に米国に輸入される際にロサンゼルスの税関でとめられていた。調査が続けられてきた結果、それがローマ帝国時代のもので、違法にイタリアから持ち出されたものという認定を受けて没収されることが決定した。
https://news.artnet.com/art-world/kim-kardashian-looted-italian-sculpture-1964390

◎描かれた本当の人物が判明
ハンス・ホルバインの細密画の一つで、これまで描かれているのはヘンリー8世の5人目の妻キャサリン・ハワード(Catherine Howard)だと考えられていたのが、実は、4人目の妻アン・オブ・クレーヴズ(Anne of Cleves)だとわかったという。最新の研究で絵がトランプのダイヤの4の上にマウントされているのがわかったからとのこと。ホルバインは他の作品でもトランプを使った同様の遊びをしているのと、またもう一枚あるホルバインによるAnneの肖像画との類似性も指摘されているという。
https://www.theguardian.com/education/2021/may/01/how-holbein-left-clever-clue-in-portrait-to-identify-henry-viiis-queen

◎英国アートシーンのムード
今年のターナー賞に5組のアーティストがノミネートされた。画家や写真作家は含まれておらず、すべてソーシャリー・エンゲイジド・アーティスト(社会に働きかけるアクティビスト的作家)のコレクティブ。今年の英国アートシーンのムードを反映してのことだという。
https://news.artnet.com/art-world/turner-prize-2021-shortlist-art-collectives-1965935

アート関連建築ニュース

◎フィラデルフィア美術館がリニューアルオープン
フィラデルフィア美術館がフランク・ゲーリーのデザインでリノベーションされて5月7日にオープンした。工事に4年、構想はなんと20年かかったとのこと。外観はこれまでと変わらないが、内部にある講堂がビル内の人々の往来の障害になっていたので苦渋の決断で取り除いて通行できる多目的スペースに変更された。この記事ではゲーリーらしい見える階段も取り入れられたリノベーション後の写真をたくさん見ることができる。
https://www.designboom.com/architecture/frank-gehry-philadelphia-museum-of-art-renovation-05-06-2021/

◎ブルックリンの新アートスペース
今年6月にコレクターのロンティ・エバース(Lonti Ebers)がAmantという新しいアートスペースをブルックリンのブッシュウィックにオープン。展覧会スペースとレジデンスの複合施設。海外作家を中心に3人が3ヶ月、年間3サイクルレジデンスしていくという。作家には生活費として月に3000ドル支給される。新築の建築は、アート業界でカルト的人気をほこるSO-ILによるもの。SO-ILはFrieze NYの初代の巨大テントの設計を担当した。
https://www.artnews.com/art-news/news/lonti-ebers-amant-brooklyn-opening-2021-1234591933/

おすすめの読み物と展覧会

◎NFTおすすめ記事
アーティストのセス・プライス(Seth Price)とMoMAキュレーターのミッシェル・クオ(Michelle Kuo)によるNFTを巡る対談。旧来のアート業界による現状把握としてバランスがとれた内容。NFTはゲートキーパーを消滅させると言われながら現状は新しいゲートキーパーに利しているだけのように見えるという矛盾の指摘など含め、NFTを包括的に見た言説で膝を打つ部分も多い。長文だがおすすめ。
https://www.moma.org/magazine/articles/547

◎トレスの活動を振り返る
バルセロナ現代美術館では9月12日までヨーロッパ最大級のフェリックス・ゴンザレス=トレスの回顧展が開かれている。あらためて彼の作品群を「Lightweight Minimalism」「Disappearing Acts」「Making Meaning」「Specific Objects」の4つのキーワードで振り返る記事と作品写真を集めた記事。
https://www.artnews.com/feature/who-was-felix-gonzalez-torres-why-was-he-important-1234592006/
https://www.artnews.com/gallery/art-in-america/features/felix-gonzalez-torres-most-famous-works-1234592031/

◎有色人種の作家に光を当て続けたギャラリー
1969年に黒人作家の発表の場がないことにあきあきした3人の作家が非営利のCinque GalleryをNYのイーストビレッジにオープン。その35年の運営期間中にサム・ギリアムなど近年大きく評価が高まっている作家を含む450人以上の有色人種の作家を紹介した。彼らとゆかりがあったアートスクールのArt Students Leagueにてその歴史を振り返る回顧展が7月4日まで開催中。
https://news.artnet.com/art-world/cinque-gallery-1962781

Kosuke Fujitaka

Kosuke Fujitaka. 1978年大阪生まれ。東京大学経済学部卒業。2004年、Tokyo Art Beatを共同設立。08年より拠点をニューヨークに移し、NY Art Beatを設立。アートに関する執筆、コーディネート、アドバイスなども行っている。 ≫ 他の記事

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