最終更新:2022年4月19日

金氏徹平が作るこの時代の新たな“彫刻”。市原湖畔美術館「金氏徹平 S.F. (Something Falling/Floating)」レポート

新作、日本初公開作を含む立体、平面、約50点により構成。金氏が「近年のコラボレーションやお世話になった方々とのつながりを寄せ集めて再解釈した」という展覧会。

会場風景より、手前が《ボイルド空想(マテリアルのユーレイ)#23》(2017)

白、赤、青と色を変える照明の下に広がる空間と、金属、石、見慣れた既製品などからなる多種多様な彫刻たち。それはまるでSF作品の世界に登場する非人間たちの遊び場のようでもある。

これらの作品を手がける金氏徹平は、身の回りの物を既存の意味や用途から解放し、つなげていくコラージュ的手法で平面や立体を問わず様々な作品を発表してきたアーティスト。近年は文学、演劇とのコラボレーションも精力的に行ってきた。

会場風景より、手前が《ボイルド空想(マテリアルのユーレイ)#21》(2017)
会場風景より、手前が《ボイルド空想(マテリアルのユーレイ)#23》(2017)

そんな金氏があらためて“彫刻”に向き合う個展「金氏徹平 S.F. (Something Falling/Floating)」市原湖畔美術館でスタートした。会期は6月26日まで。

これまで、「Smoke and Fog」「Splash and Flake」「Sculpture Fiction」「Space Fiction」「Summer Fiction」など、様々な「S」と「F」を組み合わせたコラージュ作品のシリーズを手がけてきた金氏だが、今回の「SF」は「Something Falling/Floating」。

会場風景より、手前が《ボイルド空想(マテリアルのユーレイ)#23》(2017)

作家が展覧会に寄せたメッセージによると、本展は金氏がこの5、6年のあいだに取り組んできた様々なコラボレーションや領域横断、芸術祭、世界の形態の変容を踏まえたインスタレーション作品になっているという。続く以下のメッセージを読んでいくと、本展タイトル「Something Falling/Floating(落下する・流動する何か)」が指すように、会場に並ぶ作品たちは次の段階・かたちへと姿を変えるまさに中間地点の瞬間を造形化したようにも見えてくる。

“不安もしくは不安定な時代” という言い方がありますが、僕の知っている限りでも歴史的にも、そうでなかった時などないのではないかと思います。そのなかで、既存の物から意味や価値が無くなっていく過程のあるポイントと、かたちを持たない物に意味や価値が新しく生じる過程のあるポイントが正反対のベクトルの中で一致する瞬間のようなものを塊にしていくことにリアリティがあると考えています。それは「自然」と「人為」の関係でもあり、目には見えていないものがいつでも漂っていて、あらゆる境界線をくぐり抜けて攪拌させている状態でもあります。たとえば、降雪にしても、洪水にしても、ウイルスにしても、そのかたちについて考えると、それは人や都市や社会のかたちをしているのではないでしょうか。

会場風景より、左が《ボイルド空想(マテリアルのユーレイ)#38》(2017-22)

本展に集まるのは、平面も立体もすべてがコラージュの手法で作られた作品だ。金氏は内覧会でコラージュが持ついくつかの役割を語ってくれた。「コラージュすることは人、場所、わかりづらく不安定なものをどう受け入れるかということなんだと思います。それはいろんなものとどう向き合って関係を作るかということなので、そういう意味では大したことはしてない気がしています。様々なものを見つけて接続するのが僕の作品です」。

会場風景より、「Smoke and Fog(マテリアルのユーレイ)」シリーズ
会場風景より、「Summer Fiction(River Stone)」シリーズ

今回、金氏は市原市内を巡り収集した使用済みのコンクリートや石など、自然と人為の狭間にある素材、物質をコラージュした新作を発表している。それは、千葉・房総半島の自然豊かな里山で、ダムの建設で生まれた人造湖のほとりにたたずむ市原湖畔美術館を実際に訪れることで制作されたもの。「美術館の建築や場所性にも想像力を膨らませる要素がたくさんあって、すごく刺激を受けて作品を作ることができました」と振り返る。

会場風景より、右壁面は《Gray puddle #20》(2022)
会場風景より、手前が《Smoke and Fog(Roadside Noguchi)#1》(2019)

本展はこうした新作のほか、ニューヨークのJapan Societyで好評を得た日本初公開となる《Smoke and Fog(Roadside Noguchi)》を含む立体、平面、約50点により構成される。作家が「近年のコラボレーションやお世話になった方々とのつながりを寄せ集めて再解釈した」と話すことからも、作家のひとつの区切りとしても見ておきたい展覧会だ。

金氏徹平

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野路千晶(編集部)

野路千晶(編集部)

Tokyo Art Beat / Editor in Chief。Twitter:@nojichiaki

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