
会場風景より、大川なずな《Selection》
豊かな自然と広大な農地に恵まれた「京都・亀岡保津川公園」で、土地の自然や歴史、そこで生きる人の営みをテーマにした野外アートイベント「ART PARK PROGRAM」が開催中だ。会期は9月18日〜11月8日。
京都丹波地域の5つの拠点を中心に開催されている「第43回全国都市緑化フェアin京都丹波」。「ART PARK PROGRAM」は、その会場のひとつである京都・亀岡保津川公園を舞台にした体験型のアートイベントだ。
本プログラムは公募により選ばれたアーティスト7組による野外アート展示「Art Sprout(アート・スプラウト)」と、建築家やクリエイターら10組による農小屋設置プロジェクト「Bricoyage(ブリコヤージュ)」、市民育成プログラム「ハラッパ―」の3つから成る。
記事ではこのうち、風土と呼応し多様な展開を見せる「Art Sprout」と「Bricoyage」の2企画をレポートする。
「Art Sprout」では、園内に点在する10×10mの展示区画に、公募によって選ばれた一般部門3作品、学生部門4作品の計7作品を設置。「unearth(アンアース)」をテーマに、土地に眠る記憶や自然環境、時間の重なりといった不可視の要素を掘り起こし、その価値や関係性を可視化する作品が並ぶ。
参加作家は、一般部門から上田要、西久松友花、yamfum studio×ReLink、学生部門から浅田遼、大川なずな、呼吸、飛聲(FEISHO)。
一般部門選出の「yamfum studio×ReLink」は、建築家の山内海渡と藤川美空による「yamfum studio」と、解体材のリユース研究から制作までを行う「ReLink」の協働ユニット。古民家から回収した廃材の型板ガラスを格子状に組み合わせ、田園風景の中に池のようなきらめきを放つ作品《霞池》を設置した。


本作を構成するガラスの表面には、よく見ると様々な模様があり、光の反射で多様な表情を見せる。元あった場所の記憶を宿す素材の質感は、見る者の記憶にも働きかけ、どこか懐かしい感情を呼び起こす。またここでは会期を通して隙間に植物が伸び、環境と響き合いながら変化する様子を観察できる。
このほか、市内4ヶ所の空気をステンレススチールの立方体に閉じ込めた上田要、菌糸などの地中の営みを色鮮やかな陶で表現する西久松友花の作品も、会場で確かな存在感を放っていた。


学生部門では、漆工芸の技法で制作した架空の生物の骨格を風景に重ねる浅田遼、竹と木材で巨大な人の横顔のような彫刻を作り出す呼吸など、具象的な造形が際立つものが多い。


土地の風土や文脈をふまえ、「食」の循環や人との関係性をとらえた大川なずなの《Selection》は、亀岡牛をモチーフにした楠(クスノキ)材の木彫作品。実寸大の牛の彫像の胴部分を輪切りにした空間に、食用牛を示す黄色いタグを付けたミニサイズの牛を浮かぶように配置した。切断面は合わせ鏡になっており、のぞき込むと小さな牛の姿が連続して映し出される。
農耕用から食用へと役割を変えてきた亀岡牛の歴史を彷彿とさせる本作は、木彫ならではの素朴で重量感のある体躯を通して、命の重みやその意味までも問いかけてくる。


本会場で唯一の絵画作品《THE WALL WE SHARE》を手がけた飛聲は、東北芸術工科大学の徐君逸と岩田奈海によるユニット。作家と地域住民による多方向のコミュニケーションを、絵画と言葉という異なる手段をかけあわせ、ダイナミックに表現する。表裏2面構成の本作は、亀岡の土から作った絵の具を用い、ふたりの筆致を重ねた身体性の強い絵画と、地域住民とのワークショップで紡がれた言葉をコラージュした壁面から成る。両面ともじっくり観察したくなる作品だ。

