公開日:2009年1月13日

ART BOOKS FOR YOUR Sweetheart! (2)

art map 連動企画のブックレビュー第2弾!

art map 12-1月号でもご紹介しているTABライターによるブックレビュー。第2弾をお届けします!
(第1弾はこちらからご覧ください)

ネオ・トロピカリア|ブラジルの創造力

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編:長谷川祐子(エスクアイア マガジン ジャパン,2008)
展覧会カタログは会場だけでなく、数年前から本屋さんやアマゾンでも見かけるようになった。東京都現代美術館で開催中の「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」展のカタログも、エスクァイア・マガジン社が発行した書籍だ。それもあってか、一般の私たちにも内容が理解できて(←これ重要!)、レイアウトも楽しめるような構成。書店に並んでいるのを見る限りでは展覧会カタログには見えない、洋書と並んでも引けを取らないオシャレなアート本である。なぜネオ・トロピカリアという展覧会になったのか、ブラジルの文化的歴史を紹介しながら解説してくれているので、私たちが考える「ザ・ブラジル」的なビジュアルではない作品のブラジルらしさを感じることもできる。アートを始め建築やファッション、おまけにCDレビューもついているので、展覧会を観に行かない・行けない人でも充分楽しめる。むしろ観覧後に「思い出す装置」としてお土産的に買うより、事前に読んでより展覧会を楽しんだり、一緒に行く友人や恋人にさりげなく(←これも重要)解説しちゃったりするのがよい。[ユミソン]

この写真がすごい2008

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編:大竹昭子(朝日出版社,2008)
エッセイから写真評論まで、ジャンルを超えて執筆活動を行う文筆家・大竹昭子が1年の間に見つけた気になる100の写真をコメントつきで紹介する新感覚の写真集。プロ・アマ問わず、3歳の子供から90歳の老人まで、本や雑誌、展覧会、ポスターからインターネットまで幅広い写真が取り上げられています。街に出ても、家でインターネットをしていても画像イメージの氾濫している世の中ですが、「すごい」「気になる」「きれい」など1点の写真に対して生み出される著者の様々な言葉が、「写真を見る」というシンプルで楽しい体験を改めて思い出させてくれる1冊です。写真1点につき、見開き1Pで画像とコメントが紹介されているというボリュームも手軽でちょうどよし。[橋本]

アート・インダストリー―究極のコモディティーを求めて

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著:辛美沙(美学出版,2008)
ビックリである。内容が適切すぎる。アート系ビジネス書は、自分史が大半を占める「読み物」だと思っていたが、本書は基礎ながらもマーケティング解説や、プレスリリースを出した後は電話でフォロー…といった親切な事まで書いてある。こんなに細かく教えちゃっていいの?なんて言葉が脳裏をよぎったが、実は一般のビジネス入門書の類はありとあらゆることが書いてあるので、今まで本書のような書籍が出なかったことの方が不思議なくらい。構成は、世界のアート情勢、各ジャンルのプロフェッショナルへのインタビュー、社会と関わっていくノウハウの3本柱。ただ装丁やタイトル・副題さえもクールで、こんなに中身がホットだとはわかりずらい。近頃多い下世話で似たような新書系のタイトルにすれば、手に取る人は格段に増えそうだが、そうではないこの本のいでたちに安心する。アーティストやアートビジネスを志す学生はもちろん、現在のアーティストを置き去りにしたようなアートシーンに少なからず憂いている人に、本書を読んでインディペンデントになって欲しい。[ユミソン]

ニッポン―ヨーロッパ人の眼で観た

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著:ブルーノ・タウト(春秋社,2008)
1933年に来日したドイツを代表する建築家ブルーノ・タウトが、滞在中に訪れた桂離宮や修学院離宮、伊勢神宮など、日本の古きよき建築や庭園を観察、その視点を丁寧に書き綴った名著の新装版。例えば桂離宮に関しては、派手さはないものの、長く愛されるために材料や細部のデザインが吟味されていたり、庭園鑑賞や月見を楽しむための空間的な配慮が細部まで施されている点を絶賛。モダニズム建築に通じる近代性がある、として理論化しています。まるで自らが設計したかのような、鋭い観察眼と的確な分析には驚かされます。建築やデザインに興味がなくとも、日本の文化を知る、という点においては大いに楽しく読むことのできる1冊です。[橋本]

Moleskine City Notebook Tokyo

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Moleskine,2008
Moleskineの新しい東京シティ・ノートブックを片手に、都会へ繰り出そう! ゴッホ、ピカソ、ヘミングウェイも愛用していたオリジナル黒ノートブックが、現代版として今回登場。蛇腹式ポケットにチケットを差し込んだり、都市の風景、自作の俳句などを真っ白なページに気ままに描いてみたり。40ページにも及ぶ地図帳、折り畳み式地下鉄マップの他、お気に入りのルートに貼って使える便利な半透明の付箋も搭載。大好きなレストラン、バー、ホテル、ライブハウスについての記録を書き込むことも可能。都会人だけでなく、観光客にもうれしい1冊。

ART BOOKS FOR YOUR Sweetheart! (1)

Makoto Hashimoto

Makoto Hashimoto

1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。 ギャラリー勤務を経て、2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動をはじめる。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)にて「<a href="http://www.bh-project.jp/artpoint/">東京アートポイント計画</a>」の立ち上げを担当。都内のまちなかを舞台にした官民恊働型文化事業の推進や、アートプロジェクトの担い手育成に努める。 2012年より再びフリーのアートプロデューサーとして、様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、ツール(ウェブサイト、印刷物等)のディレクションを手がけている。「<a href="http://tarl.jp">Tokyo Art Research Lab</a>」事務局長/コーディネーター。 主な企画に<a href="http://diacity.net/">都市との対話</a>(BankART Studio NYK/2007)、<a href="http://thehouse.exblog.jp/">The House「気配の部屋」</a>(日本ホームズ住宅展示場/2008)、<a href="http://creativeaction.jp/">KOTOBUKIクリエイティブアクション</a>(横浜・寿町エリア/2008~)など。 共著に「キュレーターになる!」(フィルムアート/2009)、「アートプラットフォーム」(美学出版/2010)、「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。 TABやポータルサイト 「REALTOKYO」「ARTiT」、雑誌「BT/美術手帖」「美術の窓」などでの執筆経験もあり。 展覧会のお知らせや業務依頼はhashimon0413[AT]gmail.comまでお気軽にどうぞ。 <a href="http://www.art-it.asia/u/hashimon/">[ブログ]</a>