
大巻伸嗣 Gravity and Grace Photo by Keizo Kioku *イメージ写真
アートやエンターテインメントの分野横断を掲げる新たな文化芸術祭が始動する。
今年10月10日から12月31日にかけ、東京を舞台に「ARTE TOKYO(アルテ・トーキョー、東京国際文化芸術祭)」が開幕。このほど、その詳細が統括プロデューサーの齋藤精一から明かされた。
「ARTE TOKYO」は、たんなるアートイベントではなく、文化を都市の基盤として機能させることを目指す取り組みだ。文化をインフラのように都市に組み込み、継続的に価値を生み出す仕組みとして、長期的な視点で構築を進めていく方針とする。
背景には、アートやエンターテインメントの領域が細分化され、それぞれが分断されている現状がある。こうした状況に対し、「ARTE TOKYO」は領域横断的な接続を図り、都市全体としての文化的なまとまりを生み出す役割を担うという。

展開エリアは、臨海部、日比谷・丸の内・銀座、渋谷の3地域。これらのコアエリアを中心に、都内各地で実施される多様なイベントと連携し、秋から冬にかけての東京の魅力を一体的に発信する。さらに、「プレイ」をコンセプトに、作品鑑賞だけでなく、ワークショップ、街歩き、ツアー、パフォーマンス、ユーザー生成コンテンツなど、多様なかたちで市民が文化芸術に参加できる機会を提供。エリア間の回遊性を高め、都市全体を巡る体験の創出を狙う。
臨海エリアでは、お台場周辺のリサーチをもとに作品コンセプトの検討が進められている。日比谷・丸の内エリアでは、都市の歴史や構造を「地層」としてとらえ、その分析を表現へとつなげる取り組みが行われる。

この「地層」の視点は、プロジェクト全体を貫く考え方でもある。各地域に蓄積された歴史や文化、思想をアーティストが“レンズ”として受け止め、新たな表現として提示していく。
また、都市空間における見せ方として「セノグラファー」という概念を導入する。都市の強い景観の中で作品が埋没しないよう、建築家の永山祐子が関与し、キャプションやライティングを含めた空間全体の演出を統括する体制を整える。
人材面では、「活動人口」の拡大を掲げる。たんに関わる人を増やすのではなく、主体的に文化活動に参加する人々を増やすことで、都市の文化的な厚みを高める狙いだ。

プログラムは、東京都が主導するコアプログラム、注目度の高いハイライトプログラム、公募によるパートナープログラムで構成される。パートナープログラムの募集も進められており、幅広い分野からの参加が見込まれる。各エリアには情報発信拠点を設け、来訪者への案内機能も担う。
情報発信では、秋冬シーズンのイベントを整理した地図とカレンダーを整備し、都市全体の動きを可視化する。公式ガイドブックやウェブサイト、SNSなども活用する予定だ。
事業は5つのミッションに基づいて推進される。地域に点在する文化資源を結び、価値の連鎖を生み出すこと。共通の地図とカレンダーを軸に都市の回遊性を設計し、鑑賞と移動が一体となった体験を創出すること。さらに、秋冬の東京に新たな文化観光価値を生み出し、滞在や消費を促すことも掲げる。加えて、アーティストやクリエイター、企業、地域など多様な主体が交わることで創造の磁場を形成し、都市に新たな文化のうねりを生み出す。そして、官民連携による持続可能なフェスティバルモデルを構築し、東京発の都市型文化モデルとして発信していく。
本事業は単年度にとどまらず、毎年継続して実施する方針で、初年度の取り組みは記録・分析し、次年度以降に生かす。初年度は都心部が中心となるが、今後は多摩地域を含む広域展開も視野に入れる。海外事例としては、オーストラリア・シドニーの「Vivid Sydney」を参考に、都市全体の文化的な求心力と経済効果の向上を目指すという。
都市空間、文化資源、人の動きを横断的に結びつけるこの取り組みが、東京に新たな風景と体験をもたらすことになりそうだ。
実行委員会・委員長は青柳正規(東京大学名誉教授、アーツカウンシル東京機構長)。クリエイティブチームとして、統括プロデューサーを齋藤精一(パノラマティクス主宰)、統括セノグラファーを永山祐子(永山祐子建築設計主宰)、プログラムディレクターを青木彬(藝と代表)、井口皓太(CEKAI代表)、吉田山(FLOATING ALPS代表)、セノグラファーを西澤徹夫(西澤徹夫建築事務所主宰)、森純平(interrobang代表)、アートディレクターを木住野彰悟(6D代表)が務める。

野路千晶(編集部)
野路千晶(編集部)