会場風景より
昨年9月、巨大な布に包まれたパリの凱旋門。ニュースとして耳にした人も少なくないだろう。21_21 DESIGN SIGHTにて開幕した「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門“」はこのアートプロジェクトを紹介する展覧会だ。会期は2023年2月12日まで。


クリストとジャンヌ=クロードは夫婦で活動したアーティスト・デュオだ。偶然にも同年月日の1935年6月13日に、それぞれブルガリアとモロッコで誕生したふたりは、パリでクリストがジャンヌ=クロードの母の絵を描いたことをきっかけに出会い結婚。代表作の《ランニング・フェンス》(1972-76)や《ゲート》(1979-2005)からもわかるように、モニュメンタルな環境芸術作品の制作に主眼を置いて活動を続けてきた。ジャンヌ=クロードは2009年、クリストは2020年にそれぞれ亡くなった。本展で紹介されるプロジェクト《L’Arc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961-2021(包まれた凱旋門)》はタイトルに含まれる年号の通り、1961年から構想されていたプロジェクト。60年の時を経て、悲願の実現を迎えた。

階段を降りた地下ロビーでは、パリを拠点にしていたキャリア初期の活動や、ニューヨークのスタジオでの制作風景、「包まれた凱旋門」のドローイングを描くクリストの様子が紹介される。


続くギャラリー1の展示空間中央には、施行中の凱旋門の模型が配置。周囲にはパリの地図と精巧なドローイングのレプリカや、準備を行うクリストやスタッフの様子が写真や映像として展示されている。「包まれた凱旋門」は大規模なアートプロジェクトなだけに、アーティストやスタッフが担った具体的な役割が見えづらいかもしれない。しかし、たとえばクリストの多大な仕事ぶりは見事なドローイングを通じて、想像することができるだろう。


パリでの「包まれた凱旋門」は当初、2020年に実現予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大のため延期に。クリストは実現を見届けることなく同年5月に他界してしまう。クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団のひとりであり、クリストの甥でもあるヴラディミール・ヤヴァチェフは「クリストがいないことがなにより寂しい」とコメント。同じく財団のロレンツァ・ジョヴァネッリによると、生前クリストは本プロジェクトに対して「ちょっと深呼吸した凱旋門に見えたら」と語っていたという。悲願のプロジェクトだけに、逝去が惜しまれる。


当然のことだが、本プロジェクトはクリストとジャンヌ=クロードの力だけで遂行できたわけではない。ギャラリー2ではナショナルモニュメントである凱旋門を保護しながらロープや布をまとわせるための施工計画や、プロジェクトに尽力した14人へのインタビュー映像や、スタッフの写真を通じて、本プロジェクトの細部にフォーカスし、空間インスタレーションとして「包まれた凱旋門」の再構成を試みている。




本展開幕と同時に、入口左手のギャラリー3ではユニークなプロダクトを紹介するギャラリーショップ「21_21 NANJA MONJA」もオープン。本展会期中には凱旋門のファサードをイメージしたTシャツや、凱旋門を包む布とロープをイメージしたバッグを展開している。「なんだこれは!」と驚かされるグッズもチェックしておきたい。

