アニメーションの大きな魅力のひとつに、独創的な都市空間の描写がある。この世界のどこかに実際にありそうな存在感を持ちながら、それまで見たことのない表現のオリジナリティは多くのアニメファン・建築ファンを唸らせてきた。そんな都市描写に注目する展覧会 「アニメ背景美術に描かれた都市」が谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館で開催される。会期は6月17日から11月19日まで。
実写と異なり、すべてをゼロから創り上げるアニメーションでは、背景の都市や建築、室内のディテールに至るまで意図的に描かれ、独自の世界観を構築している。本展では、1980年代末から2000年代初頭にかけて制作された『AKIRA』(1988、監督:大友克洋、美術監督:水谷利春)、『機動警察パトレイバー劇場版』(1989、監督:押井守、美術監督:小倉宏昌)、『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993、監督:押井守、美術監督:小倉宏昌)、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995、監督:押井守、美術監督:小倉宏昌)、『メトロポリス』(2001、監督:りんたろう、美術監督:草森秀一)、『鉄コン筋クリート』(2006、監督:マイケル・アリアス、美術監督:木村真二)という、日本を代表するSFアニメーションと、これらの作品に参加した大野広司、小倉宏昌、木村真二、草森秀一、高畠聡、針生勝文、水谷利春、渡部隆ら、背景美術のクリエイターたちの仕事に迫る。
展示には、卓越した技術によって緻密に描き込まれた手描きの背景美術とともに、それらを創り上げるために参照された書籍やロケハン写真などのレファレンス資料、クリエイターへのインタビュー、年表、そして建築家による未来都市構想などが並ぶ。多くのクリエイターたちがどのように現実世界を見つめ作品に描き込んだのか、都市への新たな視点を見つけることもできるだろう。
本展は、アニメ研究者のシュテファン・リーケレスのキュレーションと、メディア芸術領域のアーカイヴ研究者である明貫紘子の資料調査によって実現した、海外での2つの巡回展「Proto Anime Cut Archive」(2011~13)と「Anime Architecture」(2016~20)をベースに、アニメーションにも造詣の深い建築評論家の五十嵐太郎を監修に迎えて、都市の側面から企画構成したもの。谷口吉郎・吉生記念金沢建築館にとっては初めての異分野とのコラボレーション企画となる。