最終更新:2022年3月30日

「越後妻有 大地の芸術祭 2022」の詳細が発表! 世界の平和を願うカバコフの新作も

目[mé]、イリヤ&エミリア・カバコフ、名和晃平、森山大道など注目の新作が目白押し

イリヤ&エミリア・カバコフ 手をたずさえる塔 Photo by Nakamura Osamu

総数333点の作品が来場者を待つ芸術祭。会期は春から秋までの145日間

2022年4月29日から始まる「越後妻有 大地の芸術祭 2022」の企画発表会が行われ、新作やプログラムの詳細が発表された。

4月29日から11月13日までの145日間、春・夏・秋にわたる長い会期に発表される作品の数は総数で333作品(新作、新展開の作品は123点)。作品によって観られる時期は異なり、通年開館、春と夏のみ公開、夏から公開など様々なバリエーションがあるそうだが、夏季は可能な限りすべての作品をオープンする予定という。

大地の芸術祭2022 メインビジュアル。デザインは佐藤拓、写真は川内倫子

これらの膨大な作品とその展示場所を運営し、かつ新型コロナウィルス対策も徹底して行うのが同芸術祭の最大の特徴であり「今後いつ自然の氾濫が起こるか予想はできない。いつストップになったとしても対応できるような体制で進めていく」と、総合ディレクターの北川フラムは述べた。

新作にも注目作が並ぶ。越後妻有里山現代美術館[キナーレ]を2021年に改修、さらに改名した越後妻有里山現代美術館 MonETでは、目[mé]、イリヤ&エミリア・カバコフ、名和晃平、森山大道、中谷ミチコらが登場。映像作品を上映するシアターでは、今回のためのスペシャルプログラム、越後妻有にゆかりのある作品が見られる。また、現在ロシアによる軍事侵攻が進むウクライナ出身の作家ジャンナ・カディロワは、石のパンを題材とする新作を発表。同作はドイツを経由してウクライナから送られてくる予定だ。

中谷ミチコ 遠方の声 Photo by Kioku Keizo
アンジェリカ・マルクルの作品イメージ(MonETシアターにて上映) 画像:作家提供
ジャンナ・カディロワ 新作イメージ Photo by Ivan Sautkin

2000年から23年間にわたって続いてきた芸術祭では、ゆかりのある作家も多く亡くなっている。そこで特別企画として、かれらの活動を振り返る「大地の芸術祭2000-2022 追悼メモリアルシリーズ ー 今に生きる越後妻有の作家たち」が開催。クリスチャン・ボルタンスキー、富山妙子ら12作家の回顧展を2週間ごとに実施する。コロナ禍でほとんどがお別れの会を実施できなかったが、作品を通して故人を偲ぶ場ともなるだろう。

クリスチャン・ボルタンスキー 最後の教室 Photo by T. Kuratani

十日町エリアでの新作も多い。上新田公民館では河口龍夫が農機具に種子を埋め込んで封印した新作を発表。宙から吊るされた農機具は、実際の農作業に使用するときのように配置される。また、2000年の第1回から参加し芸術祭の方向性にも影響を与えた磯辺行久は、集落と集落をつないでいた閉村である旧十日町小貫(こつなぎ)で、かつての住民の門柱を立てるなどすることで「集落のなくなった世界」を示すという。さらにパノラマティクス/斎藤精一は、ほくほく線のトンネルに時間限定で見られる強烈な光と音の空間をつくる。

河口龍夫 新作イメージ 画像:作家提供
中﨑透 新作イメージ 画像:作家提供
椛田ちひろ 新作イメージ 画像:作家提供
パノラマティクス/齋藤精一 JIKU #013 HOKUHOKU-LINE Photo by Nakamura Osamu

中里の清津峡渓谷トンネルでは人気のMAD Architectsの新作がお披露目。松代では、清澄白河駅から東京都現代美術館へと向かう際に通る、深川資料館通り商店街による案山子(かかし)が登場し、アーティストの作品とはまた異なる表現のかたちを示すようだ。同じく松代のギャラリー湯山では、前山忠+湯山メールアートプロジェクトの名義で、パンデミック中に集められた手紙を使った展示が行われる。また、先日代表の池田修が急逝したBankARTも、同氏の遺志を継いで活動が続けられる。

マ・ヤンソン/MADアーキテクツ Tunnel of Light Photo by Nakamura Osamu
深川資料館通り商店街の案山子 Photo by Miyamoto
前山忠×湯山メールアート・プロジェクト 世界をつなぐメールアート・プロジェクト Photo by Kioku Keizo
BankART妻有2022(写真は過去の様子)

パフォーマンス作品も、大地の芸術祭の大きな楽しみ。MonETに登場する中谷芙二子の霧の彫刻では田中泯が場踊りを舞い、ボルタンスキーの《最後の教室》では森山未來によるパフォーマンスが開催される。そして巻上公一は、後述するカバコフの新作近くでコンサートを行うとのこと。各作品とパフォーマーらのコラボレーションに期待したい。

巻上公一 Photo by 池田まさあき

さて、今回の発表会で北川フラムが多くの時間をさいたのがイリヤ&エミリア・カバコフの《手をたずさえる塔》だ。カバコフといえば松代の棚田を一種の借景とした名作《棚田》(2000)などで芸術祭とも縁の深いアーティストユニットだが、パンデミックが始まった2年前に「このような時代だからこそアーティストがいろんなことを考えてやっていくのだ」と北川に伝え、作7点の制作・設置に至ったという。

その最後に完成したのが《手をたずさえる塔》で、世界中の人々が階層や地域、年齢を超えて手をたずさえ、平和の世界とすることを願って建てられた。夜になると塔の上部にしつらえられたオブジェがさまざまな光を発するが、これについてカバコフはこのように言う。

青は少し寂しいかもしれませんが、空の色でもあります。
緑は生きること、草木の色。ピンクは始まりの色、朝焼けの色。
黄色は太陽の光。

カバコフはウクライナで生まれ、旧ソ連時代のロシアで過ごした。文化統制化で自由な芸術活動が認められていなかった同国で、秘密警察に逮捕される危機感を持ちながらアトリエに留まって生活してきたかれらにとって、現在の世界情勢は胸を痛ませるものだ。パンデミックを経て同作の点灯を再開するにあたり「悲しみをあらわす青のなかに、黄色を灯したい」という希望がカバコフから芸術祭側に伝えられたという。北川は、どのような点灯が可能かを模索していきたいと語った。

青く光る《手をたずさえる塔》 Photo by Nakamura Osamu

参加アーティストのなかから発表会に登壇したのは動画で平和へのメッセージを寄せたエミリア・カバコフのみで、これは現在のウクライナ情勢を踏まえたものだったと思われる。北川が運営スタッフやボランティアによるコロナ対策を強調するように、大地の芸術祭が重視するのは、越後妻有に生きる住民こそが地域づくりの主役であるという考えだろう。

発表会の最後、越後妻有会場に登壇した「うぶすなの家」と、奴奈川キャンパスの「TSUMARI KITCHEN」に携わる女性たちと副実行委員長の津南町長・桑原悠が力強いメッセージを発したのも印象的だった。

「えいえいおー!」と声をあげる「うぶすなの家」「TSUMARI KITCHEN」のお母さんたち
津南町長・副実行委員長の桑原悠

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