公開日:2024年5月16日

犬とアート鑑賞できる街。ヴェネチア出張で見かけた自由な犬、日本の動物福祉の課題

TABのスタッフが時々更新する日記。今回は編集部・野路がヴェネチアで見かけた犬や、動物愛護のことを綴ります

ヴェネチアにて

いまこの日記を開いてくださったみなさんは、少なからず犬に関心がある方達でしょうか。私は犬が大好きです。休日の二度寝と同じくらい、幸せそうな犬の姿を見ることに喜びを感じます。

そんな犬(とくに室内犬)の幸せと言えば、自由を満喫する散歩の時間。我が家で生活をともにする3歳犬は、家ではほぼ「……」という感じですが、散歩のときは「🎵」となって、微笑ましいです。

我が家の犬。散歩前と散歩中で表情の差は歴然

4月半ば、取材でイタリア・ヴェネチアに滞在する機会に恵まれ(編集部・福島のヴェネチア日記はこちら)、そこでは幸せな犬たちの姿をたくさん見ることができました。

ヴェネチア・ビエンナーレの会場にて。警察とともに働く犬
ヴェネチア・ビエンナーレの会場にて

驚いたのは、ヴェネチアではカフェ、スーパーマーケット、水上バス、アートギャラリー(!)など、どこでも犬の姿があること。

ギャラリー内を歩く犬

フランソワ・ピノーの私設美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」でも、犬を連れた来場者がスタッフに「抱っこ」と注意を受け、犬を抱えて入場していました。日本は公園ですら犬立ち入り禁止のところが少なくないため、その寛容さに感動しました。

プンタ・デラ・ドガーナにて、順番待ち

さらに、街ではリード(紐)なしで歩く犬の姿も見かけました。我が家の犬は外出時にリードが外れると待ってました!と言わんばかりに逃走しますが、日本ではどんなに真面目な犬でも私有地以外でノーリードが許されるのは基本的にドッグランだけ。イタリアは犬やその飼い主を信用する放任社会なのかもしれません。

ノーリードで散歩
ノーリードで集会

帰国後調べてわかったのは、イタリアでは動物の殺処分がゼロで、とくにローマ市は犬や猫との暮らしに関して細かな条例が定められているなど、動物愛護の取り組みが日本よりも格段に進んでいること。日本では先週、452匹もの犬を虐待し、無免許で麻酔なしに帝王切開を行っていたブリーダーに懲役1年、罰金10万円、執行猶予3年というなんとも甘い判決が下されたばかり。動物の殺処分は減少傾向ですがイタリアのように禁止されておらず、動物愛護の観点ではまだまだ課題山積みです。自分が日本で暮らす犬だったら、ヴェネチアの仲間をきっと羨望の眼差しで見るに違いありません。

水上バスにて

最後に、ヴェネチアの犬の姿をまとめたリールをお楽しみください!

野路千晶(編集部)

野路千晶(編集部)

のじ・ちあき Tokyo Art Beatエグゼクティブ・エディター。広島県生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、ウェブ版「美術手帖」編集部を経て、2019年末より現職。編集、執筆、アートコーディネーターなど。