
会場風景
20世紀イタリアを代表する建築家・デザイナー、エットレ・ソットサス。その創作を、初期から晩年までたどる国内初の大規模回顧展「エットレ・ソットサス─魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」が、東京・京橋のアーティゾン美術館で開幕した。会期は6月23日から10月4日まで。

ソットサスといえば、1980年代に国際的なデザイナー集団「メンフィス」を結成し、大胆な色彩と幾何学的な形態によってモダンデザインの常識を揺さぶった存在として知られる。本展では、その代表作《カールトン》や《カサブランカ》だけでなく、オリベッティ社との仕事、セラミック、家具、写真、ガラス作品、ドローイングなど100点を超える作品と関連資料を通して、彼が生涯にわたって問い続けた「デザインとは何か」に迫る。

展覧会の導入部でまず目を引くのは、ソットサスがデザインしたベンチ《ルクレッジア》とフレームの組み合わせだ。フレームのなかにはロイ・リキテンスタインの写真作品が収められており、家具、額装、アートがひとつの場面として立ち上がる。ここには、機能や用途だけでは説明できない、ソットサスのデザイン観がすでに表れている。

続く展示では、オリベッティ社の赤いタイプライター《ヴァレンタイン》も紹介される。持ち運び可能なタイプライターとして広く知られるこの作品は、プロダクトでありながら、どこかポップなオブジェのようでもある。ソットサスのデザインは、道具をただ便利にするのではなく、使う人の感覚や気分まで変えてくれるような楽しさがある。
