公開日:2025年7月9日

サウンド・アーティストのevalaが「アルス・エレクトロニカ賞 2025」冨田勲特別賞を受賞。日本人初の快挙

ICCではこの受賞を記念し、evalaがICC無響室のために制作した作品を再展示する

evala 《Sprout "fizz"》(2024)の展示室にて 撮影:冨田了平 写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

日本人としては初の受賞

音楽家、サウンド・アーティストのevalaが、メディアアートの国際的な賞「アルス・エレクトロニカ賞(Prix Ars Electronica 2025)」にて、「冨田勲特別賞(Isao Tomita Special Prize)」を受賞した。日本人としては初の受賞となる。

「アルス・エレクトロニカ賞」は、オーストリア・リンツを拠点とするアルス・エレクトロニカが主催する、世界でもっとも歴史あるメディアアートのコンペティション。冨田勲特別賞は、シンセサイザー音楽の先駆者であり、空間音響における革新的な試みで知られる作曲家・冨田勲の業績を称え、その精神を継承する作品とアーティストに贈られる。

evalaは、2024年にNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]で開催された個展「evala 現われる場 消滅する像」において発表された新作《ebb tide》および、これまでの一貫した活動が高く評価された。

審査員は、受賞作品《ebb tide》について次のようにコメントしている。

審査員によるコメント:
サウンドインスタレーション《ebb tide》で、日本のサウンドアーティスト evala は、聴くというシンプルな行為がいかに変容的な体験になり得るかを示しています。彼は来場者を、意図的に視覚要素を最小限に抑えた構造物に座るよう促し、音に没入させます。この作品には、決まったリスニングスポットも、始まりも終わりもありません。音楽の伝統的な定義に逆らい、新しい感覚体験を提供することで、evalaは、視覚中心の世界において聴覚を向上させるという長年の献身を反映しています。それは、立ち止まって今に集中することの重要性を強調しています。この精神は、彼のシリーズタイトル「See by Your Ears(耳で視る)」に完璧に凝縮されています。

この作品は、東京のNTTインターコミュニケーション・センターで開催された彼の個展で発表されたいくつかのインスタレーションの一つで、サウンドアート展としては前例のない数の来場者を集めました。審査員は、この作品がサウンドアートを一般に広め、冨田勲が提唱した斬新な音楽やサウンドを大衆に届けるというビジョンと合致している点に大きな価値を見出しました。

冨田勲はサラウンドおよび空間音楽への関心と情熱で知られていました。彼の名を冠した賞が、複数のオーディオチャンネルと空間を使うことで初めて生まれる聴覚体験の創造に専念するアーティストに贈られることは、まさに彼の功績を称える証しとなります。

ICC無響室で作品を再展示

ICCではこの受賞を記念し、evalaがICC無響室のために制作した《大きな耳をもったキツネ》《Our Muse》を、8月8日から9月15日まで再展示する。体験予約の詳細などについては、後日ICCのウェブサイトにて発表される。

*evalaのインタビューはこちら

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