8月12日、国立新美術館にて「第73回学展アート&デザインアワード」 受賞者表彰式が開催された。
表彰式には、受賞者のほか、作品審査を行った青木昭夫(DESIGNART代表)、佐々木香菜子(アーティスト)、ヒロ杉山(アーティスト)、福島夏子(Tokyo Art Beat 編集者)、牧正大(MAKI Gallery)の5名も出席。それぞれ審査報告や賞状授与を行い、受賞者へ直接お祝いの言葉をかけた。
また式中は、第73回学展受賞作品展のコンセプト「新しい時代を創るとき」にちなんだムービーも上映。ムービーには、審査員と作品出展者が参加しており、審査員は『15年後の未来とアートの役割』、出展者は『少し先の未来、何をしていたい?どんな自分でいたい?』という問いに対してコメントを寄せた。
▼佐々木香菜子(アーティスト)
AIというものが、どんどん普通になっていって、人間がいなくてもいいような時代。それがアートにも繋がって、今AIが絵を描いたり、音楽をつくったりっていうのが、普通にある時代ですけど、その中でどうオリジナリティが守られていくか、オリジナリティを保っていけるか、ということを大事だと思う人が、たくさん残っている時代になっていてほしいなと思います。
そういう未来をつくるために、何かを作っている人たちが作品を作り続けて、それを世に出し続ける。その人たちがバージョンアップしながら、死ぬまで表現し続けるっていうことを、皆さんに見ていただいたり、感じていただくことが必要だと思います。そのような活動を通じて、人の心を揺れ動かすようなことをしていけるといいなと思いますし、自分自身もそうしていきたいです。
▼牧正大(MAKI Gallery)
アートの力っていうのは、本来人々に感動を与えたり、何かを幸せにしたりするものだと思います。アートを通して、ポジティブなメッセージが広がっていったり、思いが感覚的に伝えられていったり。そういうポジティブな循環をしていって、15年後どうなっているかはわからないけれど、少しでもネガティブなこととポジティブなことが、せめて均衡を保つというか。みなさんが自然体で、普通の日常が変わらず営んでいけている未来になっていれば良いなと思います。
ギャラリーは、アーティストの作品をお客さんに届けるという役割を担っていますが、世界中でより幸せが広がっていくような発信源になる、また発信源を作るということもギャラリーの仕事かなと思います。
▼福島夏子(Tokyo Art Beat 編集者)
いままで見過ごされてきた存在とか、見過ごされてきた美しさ、見過ごされてきたじつは大事なこととかが、いろいろな着眼点や評価のポイントから、しっかりと世に出ていくような、価値を認められるような世界になっていてほしいと思います。
アートは、作り手個人の持っている価値観や考え方、身体的な在り方といった個人の事柄や、土地固有の問題、その時代など、社会的背景を含んでいるものもあります。アーティストを通して、世界に開かれたひとつの大きな窓というか、ある固有のものの見方、固有の価値観、考えみたいなものを、感覚に訴えるかたちで知ることだできるものだと感じています。そういったものに触れることで、自分のいまいる環境だけにとらわれない、様々な視点、様々な考え方に触れることができるんじゃないかなと思います。
▼青木昭夫(DESIGNART代表)
日本人で今、言語の問題で臆してしまうっていう人が多いですけど、言語の問題もテクノロジーを使って、要は自信がない状態じゃなくて、もっとポジティブに、人と交流しやすいっていう状況が生まれて、それが世界的な調和を生み出しやすいきっかけにもなるんじゃないかなと思います。
また日本は、伝統文化や工芸の分野は、世界的にもうたぶんナンバーワンと言っていいぐらい残っている方なんですね。そういうものを、若い人たちもどういう伝統工芸があるかっていうのを一度ちゃんと見直して現代に呼び覚ましたり、アップデートさせるためにはどうすべきかを議論し、実践や行動に結びつけることで、クリエイティブリソースがもっと世界的に伝わりやすくできると思いますし、より日本ならではものづくりやアート表現ができるようになると思います。
▼ヒロ杉山(アーティスト)
コロナの3年間は鎖国状態みたいになっていて、それ以前も海外とかよく行っていたんですけど、3年間くらい日本から出られない状態があって、海外の人と繋がることの大切さを今すごく感じています。アートでもそうですが、色々な海外の人と繋がってモノをつくるとか、海外のギャラリーに行ったりとか、美術館に行ったりとか、そういうことがやっぱり本当はすごくありがたいことだったのに、普通に感じてしまっていて。それをコロナであらためて、そういうことができることの大切さを知ったので、これからはやっぱりアートにしても、海外の人と繋がっていくことが、とても大事なのかなって気がしますね。そういう意味でも未来は、世界の人とひとつになっていくような感じ。そういうことの大切さを、より一層みんなが知るんじゃないかなという気がしますね。
入賞・受賞作品が展示される「第73回学展 アート&デザインアワード」は8月20日まで国立新美術館で開催中だ。