公開日:2025年7月30日

【瀬戸内の新アートスポット】妹島和世が設計、犬島に新パビリオン「HANA」誕生。PRADAの寄贈により実現

「犬島 くらしの植物園」にできた常設のパビリオン

パビリオン「HANA」 撮影:川越 健太

新パビリオン「HANA」

瀬戸内海に浮かぶ犬島に、新たな建築の名所が誕生した。6月5日、岡山市犬島の「犬島 くらしの植物園」にて、建築家・妹島和世による新パビリオン「HANA(ハナ)」が公開された。本作はイタリアのファッションブランドPRADAからの寄贈により実現したもので、自然と建築、そしてアートの融合を象徴する場として注目を集めている。

「HANA」は、公益財団法人 福武財団が手がける犬島の地域プロジェクトの一環として制作された。福武財団は、2008年より妹島やアーティスティックディレクターの長谷川祐子とともに、犬島の集落に根ざしたアートや建築による地域づくりを進めてきた。2010年に公開された犬島「家プロジェクト」や、2016年より展開している「犬島 くらしの植物園」は、いずれも地域住民や訪問者との協働による持続的な活動を特徴とする。

寄贈されたHANAと「Rabbit Chair / FRP」写真 ©︎ Prada

今回設置された「HANA」は、そうした取り組みの延長線上に位置づけられるもので、厚さ3mmのステンレス板を曲げ加工し、船で犬島に運搬、現地で溶接・研磨を施して完成した。花のような2つの構造体がランドスケープと呼応しながら、「集い」の空間を生み出しており、鈍く鏡面仕上げされた表面には、木々や花、夕陽といった日々変化する植物園の景色が映り込む。まさに風景に呼吸する建築といえるだろう。

「瀬戸内国際芸術祭2025」夏会期(8月1日~8月31日)の開催に際し、一般にも広く公開された「HANA」。アート好き、建築好き必見の新たなサイトとなりそうだ。

妹島和世 コメント
「犬島 くらしの植物園」プロジェクトは、島の方々や来訪者の方々と共に土地を開墾しながら、この場所が自然と共にくらす歓びを体験できる場となることを目指して2016年から始まりました。はじめてから9年の間に、ワークショップやイベント、庭の手入れなどを通じ、いろいろな人々がこのプロジェクトに関わってくださるようになり、みんなでこの場所をつくりあげてきました。このたび、そんな場所に、みんなが集まる場所の象徴として、パビリオン「HANA」が完成したことを、大変嬉しく思います。本活動に共感しご支援くださったPRADAの皆様、これまでともに犬島で多様な取り組みを進めてきて下さった福武財団の皆様、私たちの活動を温かく受け入れ、支えてくださっている犬島の島民の皆様、そして犬島のプロジェクトに関わってくださっているすべての皆様に、心より御礼申し上げます。

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